ラグビージャーナリストの村上晃一氏(54)がワールドカップ(W杯)日本大会の主役候補を紹介するシリーズ第3回は、オーストラリア代表の精神的支柱である、フランカーのマイケル・フーパー(27)です。

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ラグビーでは、背番号6番、7番の選手をフランカーと呼ぶ。スクラムの両サイドに位置し、FW8人の中ではもっとも俊敏で、スピードがあり、タックルに、ボール争奪戦にアグレッシブに働き続ける華やかなポジションだ。

フーパーは、世界屈指のフランカーであり、オーストラリア代表の主将も務める。身長182センチ、体重101キロと、日本人FWにもよくある体格で、世界レベルでは小柄だが、常にチームの先頭に立ってタックルし、ボールを持てば重心の低い走りで確実に前進し、タックルで倒した相手から素早くボールを奪う。いつも顔に傷を作り、笑みすら浮かべながら激しくプレーする。「恐怖心」という言葉とは無縁の男だ。日本の選手からは「憧れのプレーヤー」としてフーパーの名前がよくあがる。

筆者が印象に残っているのは、15年W杯イングランド大会の決勝戦でのプレーだ。ニュージーランド代表のフランカー、リッチー・マコウとのボール争奪戦はすさまじかった。ゴールラインを背にフーパーがボールを奪い、オールブラックスのトライチャンスの芽をつんだシーンもあった。以降も第一線でタフに戦い続けている。

91年にシドニーで生まれたフーパーは、地元のジュニアクラブでラグビーを始めたが、陸上、野球、クリケットなどさまざまなスポーツに親しみ、ジュニアライフセーバーのクラブにも所属。12歳以下のビーチスプリントで優勝するなど運動能力は高かった。

高校卒業後、スーパーラグビーのブランビーズとプロ契約し、18歳5カ月でデビュー。この時は、オーストラリア代表で101キャップを持つレジェンド、ジョージ・スミスの負傷でチャンスを得た。サントリーでもプレーしたスミスは、フーパーと同タイプとあり、後継者として頭角を現したわけだ。

13年に地元シドニーのワラタスに移籍し、14年にオーストラリア代表デビュー。この年のフランス戦で負傷したスティーヴン・モーアに代わって主将を務めた。22歳223日の年齢はオーストラリア代表のテストマッチの主将としては歴代2番目の若さだった。

13、16年はオーストラリアの最優秀選手に贈られるジョン・イールズメダルを受賞。昨年、オーストラリア協会と23年までの長期契約を結んだ。卓越したリーダーシップ、けがをしない屈強な肉体、マルチなスキルを持つフーパーは、得難い存在だということだ。

オーストラリア代表キャップは、すでに91を数える。どこまでキャップ数を伸ばすのか、想像すると胸が躍る。十数年後、彼の現役時代を見ていたことを自慢できるのは間違いない。ラグビーW杯日本大会でのプレーも、じっくり観察しておきたい。

村上晃一氏
村上晃一氏