後半、相手と競り合うWTB松島(2019年9月20日撮影)
後半、相手と競り合うWTB松島(2019年9月20日撮影)

開幕のロシア戦に30-10と快勝した日本代表だが、前サントリー監督の沢木敬介氏(44)はあえて厳しく課題点を挙げた。

ボーナスポイントを加えて勝ち点5を獲得したことと、選手たちがW杯の怖さを意識したことを評価しながらも「キック処理のまずさ」と「単純なミスが多過ぎた」ことを指摘。アイルランド戦に向け、修正を期待した。

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4トライでボーナスポイントを含めて勝ち点5を獲得できた。さらに、選手たちが試合に満足せず、反省点を挙げていたこともポジティブだった。選手たちがワールドカップ(W杯)の難しさを分かっただけでも、大きな収穫。いいゲームではあった。もっとも、試合内容は手放しで喜べるものではなかった。修正すべき点があった。

ハンドリングエラーと獲得距離
ハンドリングエラーと獲得距離

(1)キック処理 これまでも課題と言われていたが、次のアイルランド戦に向けて改善しないといけない。キックメーター(キックでの獲得距離)は、日本の933メートルに対しロシアが1060メートル。キャリー(ラン)では相手の289メートルに対して653メートルと圧倒していただけに、処理ミスでのキックの劣勢が目立った。

次のアイルランドはもちろん、今後対戦するチームはコンテストキック(ボール獲得を競り合うハイパント)を多用してくるはず。まず、相手のキッカーに対するプレッシャーを徹底すること。キックの出どころを封じて、その精度を落とさせることが重要になる。

さらに、修正すべきはキャッチする選手のポジショニング。相手のキックを予測して、いち早く落下点に入ること。いいキャッチができるポジションに先に入ればミスも減る。わずか1週間でキャッチング技術を向上させるのは無理だが、相手キックを「予習」してポジショニングを修正できれば処理は安定する。

エリアプレー率
エリアプレー率

(2)ハンドリングエラー 日本は単純なミスが多かった。前半、日本は60%以上をロシア陣で戦った。相手陣22メートルラインを超えたエリアで30・4%もプレーしている。苦しんだのは、攻め込んでもミスでチャンスをつぶしていたから。ハンドリングエラーを減らすことも今後への課題になる。

試合後のリーチの話によれば、ボールがかなり滑ったとのこと。今大会のボールはグリップ力が増すように突起を単純な円ではなく星形に変え、数も増やしている。ハンドリングを安定させるためだが、汗などで水分を含むとスリッピーになることは変わらない。

自分だったら、水にぬらすなどボールを滑る状態にしてトレーニングをする。スリッピーなボールに慣れる準備も必要だ。アイルランドなど強豪国相手では、ボールを失うだけでなく1つのハンドリングエラーが失点に直結する。開幕戦でプレッシャーがあったのかもしれないが、単純なミスをしていては苦戦は免れない。まずはミスを減らすことを考えないといけない。

松島は調子がいい。3トライはすごいが、まあ想定内です。このくらいやるイメージはあったし、できる能力はある。後半から入った選手たちも、いい仕事をしていた。次のアイルランド戦に向けて、ポジティブな要素はある。ただ、世界ランキング1位のアイルランドが強いことは間違いない。勝つこと、たとえ敗れても確実にボーナスポイントを稼ぐこと。それができれば、また楽しい日本代表の試合が見られることになる。

後半、相手を華麗にかわしトライを決めるWTB松島(2019年9月20日撮影)
後半、相手を華麗にかわしトライを決めるWTB松島(2019年9月20日撮影)