<水泳世界選手権>◇最終日◇4日◇バルセロナ◇男子400メートル個人メドレー決勝

 男子400メートル個人メドレーで瀬戸大也(19=JSS毛呂山)が4分8秒69の自己ベストで金メダルに輝いた。

 究極のポジティブ思考が、金メダリストを育んだ。瀬戸の母一美さん(46)は息子にマイナスの言葉を一切言わない。小学3年から中学2年で初めて勝つまで、同学年の萩野に負け続けた。心が折れそうな息子に、一美さんは「強い子がいると、その世代は強くなる。ラッキーだよ」と諭し続けた。

 「あいつさえいなければ」とは思わず、強いライバルはラッキーと思え-。一美さんは「負けることで、次に頑張ろうと思わせてくれる。2番手の方がありがたいんだよ」と強調した。息子は連敗に耐え、母の言葉を力に変えた。

 昨年ロンドン五輪選考から漏れたときも、息子の落ち込みは激しかったが「つらい経験をしたから、4年後は強くなる。大也にとってはなくてはならない経験だよ」と言い聞かせた。

 一美さん

 五輪に出ていれば、翌年は休んだり、遊んだりと、甘い気持ちが生まれたかもしれない。しかし、あれだけの悔しさを味わえば、2度とあの思いはしたくないと頑張ることができる。

 今大会も注目と期待が萩野に集中する中、レース前から自分を信じ、形勢逆転を狙った。親譲りのポジティブ思考で培った「敗者の強さ」で、世界の頂点を引き寄せた。

 一美さんはレースを埼玉県内の自宅で、父幹也さん(47)、妹美琴さん(14)とテレビ観戦。金メダルを取った瞬間、家族3人で万歳して、抱き合った。