ニューヨーク「大阪アウェー病」「キングオブコント病」克服 単独ライブ突入

総勢6000人にも及ぶ所属タレント、芸人を抱える吉本興業。日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週木曜日を「吉本の日」とし、企画インタビューを掲載。今回登場するのはニューヨーク。1日9ステージをこなす人気コンビが、かつて悩んでいた「東西の壁」についても語ります。

おもろいで!吉本芸人

三宅敏

若手と呼ぶには実力十分。ベテランと呼ぶには若すぎる。漫才、コントの両方でぐいぐい上昇中のニューヨーク。嶋佐和也(36)と屋敷裕政(36)は、かつて「大阪アウェー病」「キングオブコント病」に悩んだこともあったという。だが、それも克服した。2人は勢いに乗って夏の単独ライブに突入する。

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ニューヨークの単独ライブ「ラスト・メッセージ」は、6月25日のクール・ジャパン・パーク・オーサカTTホールで開幕。大阪3公演、福岡1公演、東京4公演の計8ステージで5500人を動員予定だ。オール新作の漫才とコントをお披露目するという。

屋敷 おかげさまで多忙なこともあって、去年の公演も直前ぎりぎりまで準備に追われてましたが、今回はそれ以上の綱渡りです。テレビなどでもライブを宣伝させてもらってますが、実は中身が固まっていないまま「皆さん、来てくださいね」とPRしています(笑い)。

嶋佐 漫才、コント、VTRと盛りだくさんです。テレビでしかニューヨークを見ていない人に、生の舞台を楽しんでほしい。SNSなどを利用して口コミで伝えてもらえたらうれしいですね。

ニューヨークの嶋佐和也(左)と屋敷裕政(撮影・上山淳一)

ニューヨークの嶋佐和也(左)と屋敷裕政(撮影・上山淳一)

拠点は東京ベースも、いまや人気は全国区。大阪公演のチケットも売れ行き上々だが、以前は大阪に「苦手意識」を持っていた。笑いの世界における「東西の壁」の存在を感じていた。

屋敷 大阪で行われたABCお笑いグランプリでした。自分たちには「よっしゃ、しっかりやりきった」という手ごたえがあったんですが、お客さんの反応はイマイチ薄いんです。なんともいえないアウェー感がありましたね。

そのABCお笑いグランプリには2014年から3年連続で決勝に出場したが、とうとう優勝には届かなかった。

嶋佐 あの時は初めての決勝だったので、よく覚えています。ホントに受けなかった。でも、あれから何年もたっているし、今はもう苦手意識などありませんよ。むしろ大阪の雰囲気に温かささえ感じられるようになりました。

その言葉どおり、キングオブコントでは決勝進出2度(20、21年)。さらにMー1グランプリでも決勝進出2度(19、20年)と、すっかりたくましさを増した。漫才でも、コントでも、マルチに輝けるコンビに成長した。

ただ、キングオブコントにはつらい思い出もある。20年は優勝したジャルジャルに次ぐ準優勝。満を持して決勝の舞台に帰ってきた翌21年、周囲の目は「優勝に最も近い存在」と見ていた。しかし、予想もしなかった決勝10位。決勝に登場した10組の中では最下位だった。目の前にあったはずの栄冠を取り逃がし、まさに天国から地獄。

インタビューで話す屋敷裕政(撮影・上山淳一) ※撮影時のみマスクを外しています

インタビューで話す屋敷裕政(撮影・上山淳一) ※撮影時のみマスクを外しています

屋敷 さすがにマジでキツかった。心底ヘコみました。嫌なことがあっても、ふつうなら一晩寝たら気分も変わるのに、この時ばかりはしばらく引きずりましたね。キングオブコントという文字を見るのもイヤでしたから。

嶋佐 周りからもいい結果を期待してもらってただけに、直後は頭に何も入らなかった。ただ悔しい思いでいっぱいでした。翌日、ラジオ番組でも話題にしたんですが、話している我々がどよ~んと沈んでましたね。時間の経過によって少しずつ回復しましたが。

屋敷 おかげさまで、それをきっかけにまた強くなれまして、決勝で最下位になったのを今ではネタにして笑いを取るようになりました(笑い)。

しんどかった経験もバネに替えて、TBSテレビ「ラヴィット」はじめ、テレビ番組でも引っ張りだこの人気者になった。大阪に来た際は、1日9ステージとスケジュールをぎゅうぎゅうに入れられた。朝から夜まで、なんばグランド花月(NGK)→森ノ宮漫才劇場→兵庫県川西市→NGK→森ノ宮→NGK→川西市→森ノ宮→NGK。

笑いの本場・大阪で育つ吉本芸人の伝統的な“鍛えられ方”でもある、このタイトなスケジュール。舞台に出てネタを披露しては次の会場に移動、の繰り返しになる。これこそ若手から中堅、主力への階段を駆け上がる過程。それだけ人気もあり、同時に所属の吉本興業からの期待が厚いことの証明でもある。

屋敷 体力面な不安はまだありませんし、ふだんはなかなか生のニューヨークを見てもらえない大阪のファンに見てもらうチャンスだと思えば、逆に気合が入ります。

嶋佐 僕らも大阪のお客さんに会えるのを楽しみにしています。おかげさまでいくらかは出演料もアップしているので、(1日に何度も)舞台にあがるモチベーションもしっかりあります(笑い)。

今年になって、新たな仕事にも挑戦した。CM出演だ。嶋佐と屋敷の2人でチョコレート「キットカット ミニ まるごとハイカカオ+」のCMに出演。「日本郵政」のCMには嶋佐ひとりで出演した。

インタビューで話す嶋佐和也(撮影・上山淳一)    ※撮影時のみマスクを外しています

インタビューで話す嶋佐和也(撮影・上山淳一)    ※撮影時のみマスクを外しています

嶋佐 CMのお話をいただいた時は「まさか、まさか」と驚きました。実際にCMの撮影を経験させてもらって、俳優の仕事もいいなあなんて考えるようになりましたよ。エキストラでの出演は以前あったんですが、チャンスがあれば映画やドラマの仕事にも挑戦してみたいです。

屋敷 CMの撮影現場で驚くのは、こんなにも人や手間をかけているんだってことでした。経験のなかった世界って知らないことが多くて面白いし、新たな刺激をもらえますね。

屋敷と嶋佐はNSC(吉本総合芸能学院)東京校15期の同期生で、ニューヨークのコンビ結成は10年1月。屋敷は大学卒業後、テレビ制作会社に就職し、アシスタントディレクター(AD)として働いていた。「ネプリーグ」「ザ!鉄腕!ダッシュ!」が担当番組。収録現場で動き回るだけでなく、取材先に電話をかけまくったり、番組で使用するVTR素材の許可を取るため当該番組の担当プロデューサーに頭を下げる日々だった。芸人の道に進むため、わずか1年で退職したが、当時の経験を生かし、芸人になってからADネタを演じることもあった。

大学時代の2人は、ともにテニスサークルに所属していた。屋敷は同志社大、嶋佐は神奈川大出身。汗まみれでテニスボールを追いかけながら、一方では飲み会や合宿など大学生活を満喫した。

屋敷 名字が「やしき」なので大学時代には「たかじん」と呼ばれてました。今になって振り返れば、学生時代は無駄なこと、意味のないことをいっぱいやっていました。何の役に立たないことにも時間をかけてました。それが今思えば楽しいことばかり。社会人になって直接役に立つわけではないけれど、それが青春だったんだなって。

学生時代のことを語る屋敷を見て、嶋佐も表情がゆるむ。今の2人を作り上げた根っこには似たようなキャンパスライフがあったのだろう。ニューヨークのコントには、どこか10代のイメージを残すものが少なくないが、当時の楽しい時間がステージで有形無形に現れているようだ。

◆ニューヨーク単独ライブ「ラスト・メッセージ」

▼6月25、26日 クール・ジャパン・パーク・オーサカTTホール

▼7月18日 福岡県大和証券CONNECT劇場

▼7月30、31日 東京・恵比寿ザ・ガーデンホール

21年ニューヨーク単独ライブ「ナチュラル」の映像データも販売中 ニューヨークと作家によるネタ作りのエピソード、キングオブコント2021の話題などが収録された副音声付き。税込み3000円。https://magazine.fany.lol/49906/

◆ニューヨーク コンビ結成は10年1月。ともにNSC東京校15期。20、21年キングオブコント決勝進出。19、20年Mー1グランプリ決勝進出。MBSテレビ「ラヴィット」木曜レギュラー。

嶋佐和也(しまさ・かずや) 86年(昭61)5月14日、山梨県富士吉田市生まれ。趣味はロックライブ鑑賞、格闘技観戦、献血。空手初段。身長168センチ。

屋敷裕政(やしき・ひろまさ) 86年3月1日、三重県熊野市生まれ。趣味はお酒、ゴルフ、マンガ。空手2段。身長174センチ。