オール宝塚OG舞台「卒業生同士だからこそ」湖月わたるが語る熱い思い

ストーリーズ

林尚之

再来年2024年に創立110周年を迎える宝塚歌劇団。数多くのOGが舞台、ドラマで活躍しています。8月、9月の都内の舞台でもOGが出演する舞台があり、特に池袋・サンシャイン劇場で27日に幕を開けた「8人の女たち」(9月4日まで)では出演者8人すべてがOG。出演者の湖月わたるに公演にかける思いを聞いた。

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舞台「8人の女たち」に出演する湖月わたる(撮影・吉原朱美氏)

舞台「8人の女たち」に出演する湖月わたる(撮影・吉原朱美氏)

「8人の女たち」は世界的女優カトリーヌ・ドヌーブも出演して映画にもなったフランス発の人気作品。雪に閉ざされた大邸宅で一家の主人マルセルが殺された事件をめぐり、妻や娘など屋敷に集まった8人の女たちの秘密とうそが明かされるミステリー劇。10年前に日本で上演された舞台には宝塚の先輩である大地真央も出演した。今回は湖月をはじめ、水夏希、珠城りょう、夢咲ねね、蘭乃はな、花乃まりあ、真琴つばさ、久世星佳とオール宝塚OGキャストで、しかもかつてのトップスター、娘役トップが集結した豪華版。

ドヌーブや大地が演じた妻ギャビー役の湖月は「小さい頃からミステリーのファンで、大地さんの公演もチケットを買って見ました。大地さんは凜(りん)とした美しさ、華やかさが印象的で。同じ役を私がやることになって、喜びと同時に大きな挑戦になるという緊張の2つの感情が入り交じっています」。

しかも、宝塚OGでの公演となる。オール宝塚OGの公演はミュージカル「シカゴ」でも経験している。湖月はヴェルマを演じ、ニューヨーク公演も行っている。

「今回は新たなOG公演の幕開けとワクワクしています。8人それぞれのキャラクターも個性的で魅力がある。予想もできない展開で、これは絶対面白くなると思います」

先輩となる久世や真琴、4年後輩の水とは共演経験はあり、特に久世はあこがれの人だった。

「入団1年目の研1の時、月組公演『天使の微笑・悪魔の涙』に出演した時、久世さんはその新人公演で初めて主役をされていたんです。それ以来の共演で、すごくうれしいです」

珠城らとは初めての共演となるが、珠城は湖月が専科時代に出演した月組公演「長い春の果てに」を宝塚初観劇で見て、宝塚を目指すきっかけになったという。

「りょうちゃんたちとは宝塚時代にはかぶっていないけれど、世代が離れていても、会っただけですぐに家族のようになれる。宝塚のOGが集結する公演に行くと、『なんて居心地が良くて、心強くて、楽しいのだろう』と思います。現場にOGがいるだけでホッとします」

コロナ禍では公演中止を経験した。今回は9月3日夜の部でライブ配信することも決まった。

「エンターテインメントの力で生活に彩りを与えることを信じてやってきたけれど、公演ができなくなる経験がなかったので、本当に悲しくなりました。パフォーマンスへの向き合いもより真摯(しんし)になった気がします」

退団してから16年たったが、宝塚で学んだこと、経験が生きているという。

「宝塚という共通項があるから、先輩から学ぶことも多い。先輩からいただいたものを後輩に伝えることも、宝塚の伝統ですから。卒業生同士だからこそ出せるファミリー感をお届けできるし、期待を裏切らない作品になると思います」

ミュージカル「モダン・ミリー」に主演する朝夏まなと

ミュージカル「モダン・ミリー」に主演する朝夏まなと

ミュージカル「モダン・ミリー」に出演する実咲凜音

ミュージカル「モダン・ミリー」に出演する実咲凜音

朝夏まなとと実咲凜音が退団後初の共演

元宝塚宙組トップスターの朝夏まなとが、主演するミュージカル「モダン・ミリー」(東京・日比谷シアタークリエ、9月7~26日)で、宙組時代にトップコンビを組んだ実咲凜音と退団後初めて共演する。

「モダン・ミリー」は1920年代のニューヨークを舞台に、モダンガールにあこがれて田舎からやってきたミリーが、仕事や恋に奮闘する姿を描いたコメディーミュージカル。朝夏がミリー、実咲がミリーの友人ドロシーを演じる。当初は2020年4月に上演予定だったが、コロナ禍で開幕直前に中止となり、今回が満を持しての上演となる。

朝夏と実咲のトップコンビは2015年から17年の2年ほどだったが、朝夏がトップになる前の13年には「風と共に去りぬ」で「女優」共演を果たしている。朝夏は「その時は私がスカーレット、実咲がメラニーを演じているので、今は『この感覚、懐かしいね』って話しながらやっています」と振り返る。実咲も「今回の舞台では朝夏さんと一緒に歌わせていただくシーンがありますが、宝塚では男役と娘役としてご一緒していたので、その時とは(朝夏の)手の出し方も違う。すごく新鮮に感じながらお稽古しました。見る方にも新鮮さを感じていただけると思います」。

2人にとっては宝塚の大先輩となる一路真輝も、ミリーらの下宿先の女主人ミセス・ミアーズ役で出演している。

三井まこ「宝塚受験スクール」校長

宝塚OGには、宝塚を目指す少女たちを後押しするスクールを始めた人もいる。「東京アートスクール」の校長の三井まこもその1人。

退団した後、ファンから「ダンスを教えてほしい」という要望があって、東京・中野で東京アートスクールを開校した。当初は生徒3人でスタートしたが、その後、生徒も増え、卒業生は宝塚だけでなく、OSK日本歌劇団にも入団している。

「教える上で大切にしていることは、テクニックだけではなくメンタル面での指導です。何をするにも、技術がすべてではなく、心が大切。芸の世界だけでなく、すべての世界に共通することだと思います。そして、受験の合否に関係なく、その子の人生をサポートしていきたい」

今までに春野寿美礼、大和悠河、凰稀かなめのトップスター、鮎ゆうき、白城あやか、舞風りら、ふづき美世、愛原実花の娘役トップ、さらには日本歌劇団の現役トップスター楊琳を輩出している。

「トップになった彼女たちに共通しているのは、本人の努力はもちろんですが、家族の理解と協力。そして運もあると思います」

アートスクールで教える一方、ディナーショーやライブ公演も行っている。

「宝塚では芸の基本、忍耐、根性を学びました。生徒を育てることで恩返ししたいと思っています」