【レジェンドのその後】不屈のチャンプ・花形進は70代でまだミット「継続は力なり」

一線を退いてもまだまだ元気だ! 往年の名選手、指導者の気になる今を紹介する「レジェンドのその後」を蔵出しして毎週金曜日に配信します。今回はプロボクシング元WBA世界フライ級王者、花形進さんです。(2020年9月1日紙面より。年齢、所属など当時)

レジェンドのその後

河合香

<プロボクシング元WBA世界フライ級王者>

プロボクシング元WBA世界フライ級王者の花形進さん(73)は、現役バリバリでジムを引っ張っている。5度目の挑戦にして世界王座を奪取した努力の人。引退後の1985年(昭60)に会長として花形ジムを開き、今も年中無休でトレーナーとしてミットを持つ。昨年には13代目となる日本プロボクシング協会会長にも就任した。明るい人柄で「継続は力なり」をモットーに、元気いっぱいの毎日を過ごしている。

◆花形進(はながた・すすむ)1947年(昭22)1月21日、横浜市生まれ。63年11月に横浜協栄ジムからプロデビュー。69年に日本フライ級王座を獲得。69、71、72、73年と世界挑戦に4度失敗した。74年にWBA世界同級王者チャチャイ・チオノイ(タイ)に再挑戦で、王者が体重超過で王座剝奪となる。5度目の挑戦で5回KO勝ちして王座奪取した。初防衛失敗後も75、76年と2度世界挑戦失敗で引退した。通算41勝(7KO)16敗8分。85年にジムを開き、00年に星野敬太郎がWBA世界ミニマム級王座を獲得。国内で初の師弟で世界王者となった。長男晋一さんも元プロボクサーでマネジャーを務める。

会員さん相手にミットを持つ花形進会長(右)

会員さん相手にミットを持つ花形進会長(右)

変わらぬ軽快なリズム、フットワーク

花形ジムは85坪あり、ちょっとした体育館のようだ。都心では今や禁断の「三密」の手狭なジムも多い中、国内屈指の広さを誇る。1階の練習フロアには「パン、パン、パン」と乾いた音が響く。リング上でパンチを受けるミットを持つのは花形会長だ。「オレのミットは一番動く。選手もオレのが一番疲れるって」と自慢気に言った。自らが終始先に動いて打たせる。現役時代と変わらぬ軽快なリズム、フットワークが今も信条だ。

「こっちがガンガン動かないと。踏み込んだり、バックステップも。こっちが楽なら選手も楽。疲れさせないと練習になんない。止まって構えたのを打ってもな。試合では相手も動くんだから」。10回をこなすこともある。指先から首までに職業病を抱えるトレーナーは多い。会長ともなると早々とミットを置き、70歳代なんてほぼいない。花形会長は「ちょっと肩にくることもあるけど、翌日も打たして直すんだ」とあっけらかん。

74年10月、チオノイを破り笑顔で拳を突き上げる花形

74年10月、チオノイを破り笑顔で拳を突き上げる花形

5度目の挑戦で世界奪取

日本でプロは17歳からだが、2カ月さばを読んでデビュー。現役時代は14年で65戦に及ぶ。3敗3分けで6連続未勝利もあった。10回戦まで31試合かかった。世界王者を目標に始めたが「ダメかなとは思ったが、やめようと思ったことは1度もなかった」。62戦目の5度目の挑戦で日本人13人目の世界王者となった。最長で最多記録。「何より続けること。コツコツ一生懸命やっていれば。悪いことばっかりじゃないよ」。ジムの看板やミットにもモットーの「継続は力なり」、「努力」の額も掲げる。

花形進会長が持つミットにもモットーの「継続は力なり」の文字が

花形進会長が持つミットにもモットーの「継続は力なり」の文字が

昨年4月には日本プロボクシング協会の会長に就任した。30年前に神奈川県内ジムの会長で拳志会を発足した。その同志に後押しされた。「のんびりできなくなっちゃった」と苦笑いする。明るく、クリーンに、粘り強くの花形イズム3カ条で、競技人口増加を第一に運営する。「昔は毎月何十人と会員が入った。今は数人と0(ゼロ)が足りない。コロナもあって大変だけど、なんとか盛り上げて恩返しできれば」と話す。

引退9年後に横浜市内のJR鴨居駅近くにジムを開いた。2階も練習フロアと寮だが、現在はASBボクシングクラブに貸している。会員争奪戦となるところだが「元選手が貸してほしいって。うちはプロ、向こうはアマ」と実に気さくでおおらかだ。

ジムの看板にも花形進会長のモットー「継続は力なり」

ジムの看板にも花形進会長のモットー「継続は力なり」

「風邪ひいたのいつだっけ?」

「恥ずかしい」と、会員がいなくなってからサンドバッグをたたく。ジョギング、ウオーキングはしない。体を動かすのはあくまでジムだけ。「風邪ひいたのいつだっけ?」と健康そのもの。3階が自宅とあって年中無休で玄関を明けている。

大半の選手のバンデージも巻く。育成方針は「本人の気持ち次第」と放任で自主性任せ。米ラスベガスで試合が夢だった。「ちょっと難しいけど、選手育てるのが唯一で一番の楽しみ」とミットを持ち続け、2人目の世界王者の希望は捨てていない。

【「レジェンドのその後」は毎週金曜日に配信します。お楽しみに!】