「お父さんお母さんありがとう」高見山、小錦、朝青龍、白鵬ら14力士の「その時、その言葉」

ちょうど50年前の1972年7月16日大相撲名古屋場所千秋楽。米ハワイ出身の平幕高見山が外国出身力士初優勝を飾った。高見山の優勝は新時代の幕開けとなり、以降、外国人横綱が誕生、モンゴル勢が記録を塗り替えるなど、異国力士抜きでは語れない半世紀となった。これまで外国出身力士で優勝を飾ったのは14人。慣れぬ日本で修行に励み、苦労のすえに賜杯を抱いた14力士の「初優勝…その時、その言葉」を、秘蔵写真とともにお届けする。

大相撲

日刊スポーツ

<高見山の外国出身力士初優勝から50年>

異国の地で鍛錬重ね…14人の外国出身力士 初優勝写真

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①高見山(米国出身)「土俵、最高だった。まるで夢みたい」大統領もお祝い

(写真:初の幕内優勝を果たし笑顔の高見山(左)。同門の前の山もうれしそう)

(写真:初の幕内優勝を果たし笑顔の高見山(左)。同門の前の山もうれしそう)

【72年7月16日名古屋場所】相撲史上初めて外国出身力士、高見山が賜杯を手にした。 千秋楽、ただ一人2敗を堅持していた東前頭四枚目高見山(本名・ジェシー・クハウルア、米国ハワイ州出身、高砂部屋)が旭国を寄り切りに破り13勝2敗で初優勝を飾った。「土俵、最高だった。相撲取りになって本当によかった。まるで夢みたい」。

【ニクソン大統領が寄せたメッセージ】「高見山関、あなたの大相撲名古屋場所における優勝の壮挙を知り、よろこびにたえません。私はアメリカ国民とともに優勝のお祝いを申し上げます。 あなたのこの道への心からなる献身は、日本の皆さんの敬意とともに、あなたの同胞の称賛も受けるようになりました。重ねて優勝をおよろこびし、今後のご成功を祈ります。 リチャード・ニクソン」

②小錦(米国出身)「泣かないと思ったけど、土俵の下で我慢ができなかった」

(写真:初優勝の記念撮影に臨む小錦)

(写真:初優勝の記念撮影に臨む小錦)

【89年九州場所】激動の平成元年大相撲は大関小錦(25=高砂)が、涙の初優勝で締めくくった。関脇琴ケ梅を寄り切り、千代の富士の九州V9を阻止した。外国人力士の優勝は、72年名古屋の高見山以来、17年ぶり2人目。「長かったです。泣かないと思ったけど、土俵の下で我慢ができなかった」と大粒の涙をこぼした。

③曙(米国出身)「一生懸命当たってくれて、ありがとう」若花田に感謝

(写真:優勝した曙(右)は東関親方(元関脇・高見山)と鯛を片手に喜ぶ)

(写真:優勝した曙(右)は東関親方(元関脇・高見山)と鯛を片手に喜ぶ)

【92年夏場所】曙(23=東関)が涙で初賜杯を抱き、大関昇進を決めた。同期対決の若花田(21=藤島)を押し倒しで圧勝、13勝2敗とした。外国人力士として史上3人目、また自らもV経験を持つ外国出身の東関親方(元関脇高見山)が育てた、初の外国人優勝力士でもある。「ありがとうございます。とても光栄です」。若花田に対しては「一生懸命当たってくれて、ありがとう」と感謝。

④武蔵丸(米国出身)「うれしいよ、うれしいよ、うれしいよ、うれしいよ」

(写真:全勝で初優勝を決め、支度部屋で賜杯を手にする武蔵丸)

(写真:全勝で初優勝を決め、支度部屋で賜杯を手にする武蔵丸)

【94年名古屋場所】大関武蔵丸(23=武蔵川)が、全勝で初優勝を飾った。千秋楽結びの一番、大関貴ノ花(21=二子山)を左からの豪快な下手投げでたたきつけた。1989年(平元)秋場所の千代の富士以来5年ぶりの全勝優勝で、全勝初Vは外国人としては初の快挙。快挙をなし遂げた喜びと興奮で「うれしいよ」を繰り返すばかりで、後は言葉にならなかった。

⑤朝青龍(モンゴル出身)「重いものをとっちゃった。上を目指すにはまだ足りないものがある」

(写真:史上最速タイの初優勝から一夜明け、記者会見を終え大広間で大の字になる朝青龍)

(写真:史上最速タイの初優勝から一夜明け、記者会見を終え大広間で大の字になる朝青龍)

【02年九州場所】大関朝青龍(22=高砂)が、悲願の初優勝を飾った。関脇若の里(26)を不利な体勢から外掛けで下して12勝目。3敗力士がいないため、13日目の優勝となった。モンゴルから来日して5年5カ月。軽量のハンディを闘争心で克服して、貴花田(現貴乃花)に並ぶ初土俵から24場所目の最速Vと、モンゴル出身力士として初Vを達成した。「重いものをとっちゃった。上を目指すにはまだ足りないものがある」。

⑥白鵬(モンゴル出身)「お父さんお母さんありがとう。全身全霊をかけて…やりました」

(写真:初優勝した大関白鵬は支度部屋で父ジジド・ムンフバト(右)さんと並んで笑顔)

(写真:初優勝した大関白鵬は支度部屋で父ジジド・ムンフバト(右)さんと並んで笑顔)

【06年夏場所】大関白鵬(21=宮城野)が初優勝を果たした。本割で把瑠都(21)を下し、14勝1敗で並んだ雅山(28)との優勝決定戦を制して賜杯を抱いた。歴代4位の若さとなる21歳2カ月での優勝で、宮城野部屋の力士としては1915年の大関鳳以来91年ぶり。「親方をはじめ、お父さんお母さんや部屋のみなさんにありがとうと言いたいです。全身全霊をかけて…やりました」。

⑦琴欧洲(ブルガリア出身)「ひざが思うようにならなくて悔しかった。言葉にならない」

(写真:土俵際のインタビューで、両手を上げてファンの声援に応えた琴欧洲)

(写真:土俵際のインタビューで、両手を上げてファンの声援に応えた琴欧洲)

【08年夏場所】大関琴欧洲(25=佐渡ケ嶽)が関脇安馬(24)を破り、千秋楽を待たず初優勝をつかみ取った。立ち合い迷いなく前に出て、2秒3で送り倒した。19歳でブルガリアから来日し、初土俵から5年半での優勝は、欧州出身力士として初で、外国人としては7人目。かど番場所での優勝も史上7度目だ。06年春場所から続いた、朝青龍、白鵬のモンゴル勢の連続優勝を止めた。「うれしいです。言葉にならないです。ひざが思うようにならなくて悔しかった。やっとつかめました」。

⑧日馬富士(モンゴル出身)「何も考えず思い切っていくだけだった」白鵬との決定戦制す

(写真:一夜明け会見 初優勝から一夜明けた日馬富士は痛飲がたたり目がトロン、会見前に目をこすりハッキリさせる)

(写真:一夜明け会見 初優勝から一夜明けた日馬富士は痛飲がたたり目がトロン、会見前に目をこすりハッキリさせる)

【09年夏場所】大関日馬富士(25=伊勢ケ浜)が初優勝を飾った。本割で大関琴欧洲(26)を首投げで下し、14勝1敗で並んだ横綱白鵬(24)との優勝決定戦を、左からの下手投げで制した。外国出身力士としては8人目、モンゴル勢としては3人目の優勝。「何も考えず、思い切っていくだけだった」。

⑨把瑠都(エストニア出身)「実感がない。ドキドキしてます。人間やればできる」

(写真:初優勝を記念したワインを手に笑顔の把瑠都)

(写真:初優勝を記念したワインを手に笑顔の把瑠都)

【12年初場所】大関把瑠都(27=尾上)が琴奨菊を豪快な下手投げで破り、初日から13連勝で初優勝を決めた。把瑠都は外国出身力士としては9人目、エストニア出身では初の優勝。「あまり実感がない。ドキドキしてます。夢みたい。いい相撲も悪い相撲もあった。自分の中で頑張りました。人間やればできる」。

⑩旭天鵬(モンゴル出身)「決まった瞬間は頭が真っ白。何がなんなのか分からない」

(写真:一夜明け会見 初優勝の一夜明けで、スカイツリーを背に家族と記念写真に納まる左から恵子夫人、柚希ちゃん、旭天鵬、蓮ちゃん、母のツェベルマさん)

(写真:一夜明け会見 初優勝の一夜明けで、スカイツリーを背に家族と記念写真に納まる左から恵子夫人、柚希ちゃん、旭天鵬、蓮ちゃん、母のツェベルマさん)

【12年夏場所】西前頭7枚目の旭天鵬(37=友綱)が、東前頭4枚目の栃煌山(25)との優勝決定戦を制して初優勝を飾った。平幕同士の優勝決定戦は史上初。旭天鵬は92年にモンゴルから来日し、05年に日本国籍を取得。入門から20年で、初めて天皇賜杯を抱いた。「信じられない。ここまで来たらやるしかないと思った。決まった瞬間は頭が真っ白になった。何がなんなのか分からない」。

⑪鶴竜(モンゴル出身)「やってきて良かった。賜杯をもらった瞬間、『やった』というか…本当に良かった」

(写真:琴奨菊を破り、初優勝を決めた鶴竜。左後方では元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏が拍手)

(写真:琴奨菊を破り、初優勝を決めた鶴竜。左後方では元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏が拍手)

【【14年春場所】大関鶴竜(28=井筒)が大関琴奨菊(30)を寄り切って、史上100人目となる初優勝を飾った。モンゴル出身力士として4人目の横綱誕生は確実。「相撲をやってきて良かった。(賜杯は)重かったです。もらった瞬間、『やった』というか…本当に良かった」。

⑫照ノ富士(モンゴル出身)「夢みたい…。お母さん、お父さんに感謝の気持ちでいっぱい」

(写真:白鵬が敗れ優勝が決まり支度部屋で感無量の表情を浮かべる照ノ富士)

(写真:白鵬が敗れ優勝が決まり支度部屋で感無量の表情を浮かべる照ノ富士)

【15年夏場所】関脇照ノ富士(23=伊勢ケ浜)が横綱白鵬との優勝争いを制し、初の賜杯を手にした。碧山を寄り切りで下して12勝目。3敗で並んでいた白鵬が横綱日馬富士に敗れ、101人目の優勝力士となった。「夢みたい…。お母さん、お父さんに感謝の気持ちでいっぱい」。

⑬栃ノ心(ジョージア出身)「優勝は、どんな気持ちなんだろうと思ってたけど…。こんな気持ちなんだ」

(写真:土俵下で初優勝の感慨に浸る栃ノ心)

(写真:土俵下で初優勝の感慨に浸る栃ノ心)

【18年初場所】西前頭3枚目栃ノ心(30=春日野)が念願の初優勝。勝てば優勝の一番で東前頭9枚目松鳳山を寄り切った。13年名古屋場所の右膝前十字、内側側副靱帯(じんたい)断裂から4年半。東欧のジョージアからやって来て12年。「親方に、おかみさんに感謝します。両親に、グルジア人のみんなに、友達に…。みんなにありがとうと言いたいです。優勝は、どんな気持ちなんだろうと思ってたけど…。こんな気持ちなんだ」。

⑭玉鷲(モンゴル出身)「想像もしていなかった。夢だった。夢を実現できて今でも信じられない」

(写真:優勝力士インタビューで涙ぐむ玉鷲)

(写真:優勝力士インタビューで涙ぐむ玉鷲)

【19年初場所】関脇玉鷲(34=片男波)が涙の初優勝。遠藤を突き落とし、ただ1人2敗を守って逃げ切った。34歳2カ月での初優勝は、年6場所制となった1958年以降で2番目の年長。初土俵から90場所は史上4位のスロー記録となった。この日、第2子の男子も誕生し、最良の1日となった。「最高です ! 想像もしていなかった。夢だった。夢を実現できて今でも信じられない」。