久世さん“遺作”「東京タワー」ドラマ化
急逝した演出家久世光彦さん(享年70)が演出を手掛ける予定だった、作家リリー・フランキーさんの大ベストセラー小説「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」のドラマ化が正式決定した。12日、フジテレビが発表した。「万が一のことがあっても実現を」という久世さんの遺志を継ぎ、映画「県庁の星」の西谷弘監督(44)が演出を担当。今夏単発スペシャルで放送される。「ボク」ことリリーさんを大泉洋(32)、「オカン」を田中裕子(50)が演じる。
「泣き顔を見られたくなければ電車で読むのは危険」などの口コミであっという間に120万部を売り上げ、老若男女の涙をしぼり取っている「東京タワー−」。久世さんも例外ではなく、すぐに原作権を獲得。昨秋からドラマ化に向けて、企画をすすめていたという。台本もほぼ完成していたが、最終決定稿が出来上がる直前に亡くなった。
久世さんが中心になってすすめてきた企画だっただけに、ドラマ化は一時、白紙になった。しかし、生前、複数の関係者に「自分に万が一のことがあっても実現してほしい」と頼んでいたというほど、思い入れのある企画だったため、続行された。
久世さんに代わって白羽の矢が立った西谷氏は、ドラマ「白い巨塔」「エンジン」などを手掛けてきた。最近では、織田裕二主演「県庁の星」で映画監督デビューを果たしたばかりだ。制作スタッフの「最も力がある監督の1人。久世さんの残した世界を新たに構築し直すのにふさわしい」との判断で決定した。
物語は、リリーさんの子供時代からの半生を主に母親とのふれ合いを軸に展開していく。リリーさん自身がモデルの「ボク」を大泉、数々のエピソードで読者を泣かせた母親「オカン」は田中が演じる。地元北海道で絶大な人気を誇る大泉は、ゴールデンドラマ初主演になる。
リリーさんは「尊敬する久世さんからドラマ化のお話をちょうだいした時は本当に光栄で、うれしく思いました。久世さんのお気持ちを引き継ぎ、新しい世界を描いてくださることを一視聴者として心待ちにしています」と期待している。フジテレビ編成部の和田行氏は「遺志を受け継ぎつつ、新しいものを作り出していかなければならない、という気持ちです」と話している。
[2006/3/13/07:28 紙面から]
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