NHK記者の取材源秘匿は認める
米国の健康食品会社の日本法人への課税処分に関する報道をめぐり、NHK記者が取材源に関する証言を拒絶したことの当否が争われた裁判の抗告審で、東京高裁は17日、証言拒絶を認めた1審新潟地裁決定を支持、会社側の抗告を棄却する決定を出した。
同種裁判では14日、東京地裁が読売新聞記者の証言拒絶には理由がないとする決定を出したばかり。高裁は逆判断を示した。
決定理由で雛形要松裁判長は「報道機関の取材活動は、民主主義社会に不可欠な国民の知る権利に奉仕する報道の自由の前提」とした上で、取材源は民事訴訟法が証言拒絶を認める「職業の秘密」に当たると指摘。「この価値に匹敵する以上の公共的な利益が害されるような特段の事情が認められない限り、取材源秘匿のための証言拒絶は許される」との基準を示した。
その上で、今回の問題について「報道機関の取材活動が持つ価値に勝る利益の侵害があるとまで認めることは困難」と結論づけた。
会社側は「公務員の守秘義務に違反したとみられる取材源を保護する必要はない」と主張したが、雛形裁判長は「記者の証言拒絶で保護されるのは取材源の利益ではなく、公表により深刻な影響を受ける報道機関の利益であり、ひいては報道機関の民主主義社会での価値だ」と明言した。
決定は「報道機関の公務員への取材は、真に報道目的で手段方法が相当なら、取材源に国家公務員法違反の守秘義務違反を求めてもただちに違法とはならない」とする最高裁判例を踏襲した。
決定によると、NHKは97年10月、この米国食品会社の日本法人が77億円の所得を隠したなどと報道。食品会社は「米政府が日本の国税当局に提供した税務情報が報道機関に伝わった」と主張し、米政府に対し損害賠償を求め米国で提訴した。
[2006/3/17/14:25]
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