【第11回】
幼い時からNOと言える教育を
デート暴力
ドメスティックバイオレンス(DV)は、世代間に連鎖する心の病だと言われる。
「A男がさ、キレてまた私を殴ろうとしたから、顔よおー。逃げたわよー、もうチョーむかつく」「そー」「でもそのあと謝って、好きだって言うから今度だけはねっ、いいかなって…」。最近、中、高校生など若いカップルの間でこういった「デート暴力」「デートDV」が問題になっている。恋愛関係が、いつのまにか支配関係になって、夫婦間の暴力と同じようなことが起きる場合が増えているという。
「アダルトビデオによる影響も無視できません。無理やりセックスをされたり、性器などを見せられたりするという高校生間の暴力も増えています。もしわが子が被害に遭ったとき、あるいは加害者になっているとき、親がそれを感じ取れるかがポイントです。娘がボーイフレンドと出かけて、万が一、殴られたという場合でも、『暴力は絶対に許してはいけない』という確信が女の子の中に育っていれば、大人に相談してくるはず」と思春期の子どもたちの相談を多く受ける日本家族計画協会クリニック(東京・新宿区)所長の北村邦夫医師は指摘する。
暴力の中で育った人は、怒りを言葉で表現できず、他人を暴力で傷つけることはもちろん、自分が傷つけられることにも鈍感になる。若い世代ほど無理やり支配する事が「男らしさ」や「親しさの表現」と思い込む傾向が強いようだ。また、男性の暴力や、言葉の暴力に耐える女性が当たり前というイメージを幼いときから植え付けられた子どもは、暴力で人を支配したり、虐待を愛情と混同して受け入れる危険性がある。
「日常の夫婦関係の中でも、バカ、グズというような言葉の暴力を子どもに見せるのは良くない。母親も暴力を振るう夫とは別れる事をいとわないという毅然(きぜん)とした態度を見せるべき」と(北村医師)。子どもには、誰かに暴力を振るわれたり、嫌なことを強制されたら、NOと拒否することを、幼いときから教えよう。不当なことをされたら、逃げること、そして信頼のおける大人にその事実を告げることを、繰り返し教育しよう。それが大人から子ども、子どもから子どもへと連鎖するDVという心の病を防ぐ方法だ。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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