【第64回】
都道府県ごとに拠点、支援体制を
発達障害者支援法
小中学校などで、知的障害はないが「集団行動やコミュニケーションが難しい」「特定の学習の理解が難しい」といった子どもの問題が指摘されて久しい。この中には軽度の発達障害を抱える子どもたちがいると考えられている。
自閉症や学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害について、具体的な支援態勢づくりを進めるための「発達障害者支援法」が3日、成立した。今後、都道府県ごとに「発達障害者支援センター」がつくられ、学校教育や地域生活などを援助する。超党派で法案づくりを進めてきた民主党の山井和則衆院議員は「長い間、制度の谷間で支援がなかった子どもたちや親の悲願でもあった法律です。どんな障害を持つ子どもも、それぞれに必要な支援や教育を受けて、元気に育っていけるようにすることが大切です」と語る。
児童精神科医の高岡健医師は「保健、福祉、教育の分野で、これまで支援が不足していた領域に焦点が当てられたことは前進です」と同法を評価するが、一方で「法案作成にあたって障害を持つ当事者からの意見聴取が行われていない」ことを指摘する。ADHDの当事者団体を主宰するロクスケ氏は「法案成立は喜んでいる。ただ、学校や社会で発達障害に対する理解や認識が正しく広まらないと、当事者の自立と社会参加を支援するのは難しいのではないか」として、今後も当事者の気持ちや経験を社会に向けて発信する活動に力を入れたいと話す。
家族の立場から東京つばさの会(高機能自閉症・アスペルガー症候群児者の親の会)の増田美知子氏は「法案成立で、障害の特性に合った対応が進むことを心から願っています。法案は第1歩で、これを生かすためには親や当事者が声を上げていかなければならないと思う」と話す。増田氏は、これからの子どもたちへの施策とともに、すでに思春期や成人に達し、発達障害による2次的障害を抱えている人たちへの援助も必要なことを指摘している。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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