【第67回】
盲腸!? 実はクラミジアが犯人
性感染症
東京・品川区の昭和大病院産婦人科では、毎週火曜日午後を思春期外来の時間としている。普段は、妊婦や中年女性の多い外来の待合室に、この日は制服姿の高校生やジーンズ姿の大学生などが大勢訪れる。「待合室に同世代の子がたくさんいるというだけでも産婦人科の敷居は低くなるようです」と笑顔で話すのは、白土なほ子医師だ。
産婦人科は「お産」のイメージが強いため、若い女性の中には「あまり縁のない場所」という印象を持つ人も多い。だが、婦人科の医師は、女性ホルモンの専門家なので、生理のことはもちろん、貧血や毛深いという悩み、太っていてダイエットをしたいなどといった女の子の体の悩みにも応えてくれる。
最近10代に増えているのは、クラミジアという性感染症だと白土医師は指摘する。クラミジアは感染しても、おりものが増える程度で、自覚症状がない人も多い。しかし、時には菌がおなかの方まで上がって、ひどい腹痛を引き起こすこともある。無症状だからと放置すると、将来的に不妊症や子宮外妊娠にもなる病気だ。
「若い女性が夜中に腹痛を訴えて救急車で運ばれ、外科で盲腸と診断されて手術をしたのに痛みがとれない。後から結局、クラミジアであったことが判明するケースも少なくありません」と白土医師は現状を説明する。感染症に限らず女性の腹痛は、婦人科系の病気が原因のことも多いことを親も知っておこう。
母親が娘の診察に付き添ってきた場合、白土医師は性感染症の疑いがあると感じると、子どもだけを別室に呼び、面と向わずエコーの機械などを操作しながら「彼とエッチして病気が移っちゃったんだと思うんだけど、心当たりある?」と同性ならではのさり気なさで尋ねる。「性の問題はデリケートですから、お子さんにもお母さんの気持ちにも配慮しながら説明と治療をしていきます」。
またクラミジアなど性感染症の場合には相手の男性の治療も必要なことが多い。「彼にも必ず早く治療をするように伝えてね。そして今後エッチする時には、妊娠を避けるためにも、初めから必ずコンドームを使うように、2人で話しあってね」とアドバイスしている。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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