ホリエモン逮捕、ヒルズから拘置所へ
ライブドアグループの証券取引法違反事件で、東京地検特捜部は23日夜、同社堀江貴文社長(33)と宮内亮治取締役(38)岡本文人取締役(38)ライブドアファイナンスの中村長也社長(38)の4人を逮捕した。強制捜査開始からわずか1週間、堀江容疑者は同日午後からの事情聴取の後、午後6時半ごろ東京地検で逮捕された。特捜部は、粉飾決算、偽計取引など一連の“不正錬金術”を堀江容疑者が認識していたと判断。株式市場が大混乱したり、自殺者が出たことなどから「Xデー」を一気に早めた。時価総額世界一を目指し、短期間で上り詰めた“ITの寵児”は、転落も早かった。
午後6時すぎ、堀江容疑者を乗せた特捜部の白いワゴン車が東京・六本木ヒルズを出た。皮肉にも、絶頂時の昨年総選挙で乗った車と同じトヨタのワゴン車。カーテンは閉められ、表情はうかがえない。車は東京・霞が関の東京地検庁舎に直行し、堀江容疑者は午後6時半ごろ逮捕された。地検で事情聴取を受けていた宮内容疑者ら幹部3人もほぼ同時に逮捕。ネット界の寵児があっという間に「容疑者」に転落した。
16日の強制捜査スタートからわずか1週間。堀江容疑者はこの日昼すぎまで本社におり、一部マスコミの電話に対し「(聴取要請は)きていない」と元気がない様子で答えていた。特捜部は23日午後3時すぎから、堀江容疑者をヒルズエリア内で、任意で初めて事情聴取。堀江容疑者が「不正な取引はない」と否認したため地検に移動し、当日中の超スピード逮捕となった。
堀江容疑者を乗せた車は午後9時すぎ地検を出て、パトカーで囲まれながら東京・小菅の東京拘置所へ移動した。全裸で身体チェックされた後、独居房に入ったとみられる。関係者によると、部屋で遅い夕食を取って就寝したという。家賃220万円の高層マンションで美食に明け暮れた生活から転落した屈辱的瞬間でもあった。
調べでは、ライブドア関連会社「バリュークリックジャパン(現ライブドアマーケティング)」が04年10月、出版社「マネーライフ社」を買した際、うその発表をした偽計取引の疑いのほか、同年11月、売上高や利益を水増しした決算短信を発表した風説の流布の疑いを持たれている。ライブドア本体も04年9月期決算で、10億円の赤字を14億円の黒字に粉飾した疑いも浮上している。
これまで堀江容疑者は自身のブログなどで「身に覚えがない」と述べるなど抗戦の構えを見せていた。だが特捜部は、粉飾などの不正「錬金術」を堀江容疑者が認識していたと判断。20日から聴取していた宮内容疑者の「堀江に報告して了承を得ていた」という供述を得ている上、堀江容疑者が指示しているメールも入手しているという。
決定的な「証拠」も押収されている。岡本容疑者が04年11月6日、グループ幹部に出したメールで、疑いの取引について「リスクも思いのほか少ないことが、堀江社長との会話で分かりました。LD(ライブドア)からの出資に関しては、5社くらいの国内外ファンド、個人を通しており、99・9%発覚することはないと感じました」「ライブドアは怖い会社」と書いていた。これらのメールは、堀江容疑者の逮捕に踏み切る強力な材料となった。
強制捜査以降、株価が暴落するなど、市場が大混乱していた。18日には元側近、エイチ・エス証券副社長野口英昭さん(38)が自殺。さらに堀江容疑者らが無実を主張し続けていた中で「早急に結論を出さないと市場の混乱が続く。また、証拠隠滅の恐れもあり、身柄を押さえる必要があった」(地検関係者)との判断で「Xデー」が早まった。堀江容疑者は最近、着替えを持ち歩いていたという。
ライブドアでは逮捕後「現時点では何も申し上げられない」とコメント。特捜部は今後、「錬金術」全容解明を目指す。
[2006/1/24/09:29 紙面から]
写真=証券取引法違反容疑で逮捕され東京拘置所に入る堀江貴文容疑者を乗せた車(撮影・たえ見朱実)
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