女優小林千登勢(こばやし・ちとせ)さんが03年11月26日午前0時27分、多発性骨髄腫(こつずいしゅ)のため、都内の病院で死去した。66歳だった。6年前から骨髄腫の疑いをもたれ、3年前に正式に診断され、女優業を続けながら病気と闘い続けていた。83年にNHKの大ヒットドラマ「おしん」に出演するなど女優として人気を集める一方、クイズ番組の解答者、ワイドショーのコメンテーター、エッセー出版など幅広く活躍した。
小林さんは、10月30日に都内の病院に入院。一時帰宅は数回したが、体調は回復せず、24日に病状が急変し26日に亡くなった。病院には夫で俳優の山本耕一(68)をはじめ、一人娘でタレントの山本麻利央(31)や孫の亜果利ちゃん(2)も駆けつけ、家族に看取られながら息を引き取った。
この日、都内の自宅前で取材に応じた夫の山本によると、小林さんは、6年前にぜんそくの治療のため訪れた病院で血液検査を受けて、骨髄腫の疑いがあると告げられた。それから3年後、多発性骨髄腫と正式に診断された。病名は小林さんにも告げられていた。新薬の投与など治療も続けたが、今年8月下旬に主治医から「余命1年」と告げられた。小林さんは「できる限り仕事がしたい」と話し、10月は治療に専念したものの、11月3日には病院から講演先に駆けつけるなど、仕事をこなしていた。
山本は「仕事への思いや家族への心遣いなど、気にしすぎるぐらい気を使う人でした。こんなに早く逝ってしまうとは」と言葉を詰まらせた。孫の幼稚園の入園試験を気にしていた病床の小林さんに「試験を頑張ってきたからね」と伝えると「うん、うん」とうなずいた。それが最後の言葉になった。来年は結婚40周年を迎える予定だった。
平壌からの引き揚げ体験を持つ小林さんは、29日に都内で開催されるイベント「平和祈念フォーラム03」に参加する予定だった。29日は通夜が営まれるが、小林さんの代わりに山本がイベントに出席するという。
テレビ草創期から活躍し、83年には高視聴率を記録したNHK「おしん」で主人公の奉公先のおかみさんを演じ親しまれた。またクイズ番組「ヒントでピント」ではレギュラー解答者として出演し、ひょうきんな一面も見せた。麻利央が挙式した時に、かつて自分が着たウエディングドレスをプレゼントするなど仲が良く、今年6月の旅番組で母娘共演もした。また、引き揚げ体験をつづったエッセーや児童文学も出版するなどマルチな活躍を続けた。