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 2003年11月19日更新

マラソン美談か失格か

<市民マラソンの部、完走4割の真実>

 それは美談なのだろうか、失格宣告を受けなかった「規則違反」の行為だったのだろうか。僕にはわからない。

 16日の東京国際女子マラソンは、高橋尚子さんの失速で大きな関心を集めたが、走ったのは高橋だけではない。

 25回大会を記念して、新たに「市民マラソン」男女の部が設けられ、合計2111人が出走した。そのことは大きく報じられたが、では何人が完走したのか。それを見れば、高橋の失敗レースの構図も、足元から見えてくるのではないか。

 実は、2111人のうち、完走したのはわずか877人で、約6割が失速して途中で打ち切りを宣告され、追い上げ車に乗せられていたのだ。数字自体は発表されたが、この手の市民マラソンとしては異様に完走率が低かったことは、世の中が気づいていないことだ。

 高橋については今後も論議され、あるいは多くのドキュメントが改めて紹介されるだろうが、あの日のレースの「土台」市民マラソンで起きた「事件」は、看過できない要因だと思う。

 完走率4割は、事件だ。

 混乱。

 市民ランナーの部門のためにも、5kmごとの給水テーブルと、7kmから始まるスポンジ・テーブルが用意され、東京陸協の係員が懸命のサービスを続けた。

 ところが、スタート直後の5kmのテーブルから、早くも「あ、水がない」という悲鳴に近い声が出始めた。参加者に聞くと、「本来のレース(東京国際女子・本レース)に出場した人たちが水を取った後に自分たちが殺到した。テーブルは、取りやすいように長く展開されていたが、コップに水を注いで新たな市民ランナーの群れに提供する時間的な余裕がなかったらしく、5kmでは水が欲しくても取れなかった人がむしろ大多数。それは10kmでも同じ。ランナーはあの暑さと風で、どんどん脱水症状に追い込まれた」。

 スポンジも同様だった。

 スポンジは、そのままでは化学洗剤?が含まれているので、東京陸協では業者サイドに「人数が多いので、予め400個は洗った状態で納品して欲しい」とわざわざオーダーしたと聞く。それでも、あっという間に足りなくなった。ボランティアで手伝った人に聞くと、「通常はせいぜい1人2個のスポンジを取る。ところが今回は、テーブルを、取りやすくするために270m長で展開していたせいもあったのか、いやおそらくはあの南風で予想外に体力と水分を消耗したのか、前の方のランナーは1人4個平均を消費した。普段の2倍だった。それでは、もう後から来るランナーの分が間に合わなくなる。必死で洗い、水をつけて提供した。へとへとになった」と言う。

 気象庁はそうは言わなかったが、僕の体感では、あの日の風は「フェーン現象の南風」だった。市民マラソンの部とはいえ、出走したランナーは「楽しく走ろう、いい汗かこう組ではない。市民の部としては非常に高レベルな集団だった。特に男子は経験も豊富な人たちだ。その人々ですら、あの異常気象には負けた。それが水の需要を異様に高め、運営側もそこまでは対処が追いつかず、ますます「水不足」が深刻な状況となった。

 このため、30km、35kmでは「失速」ランナーが続出した。坂に備えて不用意にペースを抑えたら、追い上げ車にすぐ捕まった、と笑う人もいた。このあたりに「タイム・オーバーで失格」を宣言されたランナーが貯まり、本来ならすぐにバスに乗せられて返ってくるところが、バスも間に合わず、結局タクシーに相乗りして国立に返ってきた人も多数いたし、脱水症状でけいれんを起こしながらも、バスに水が用意されていなかったために症状を悪化させた人もいた。

 あのレースは、そういうレースだった。絞り込みすぎ、準備不足と言うが、高橋尚子にとっても、気象条件はどうにもならない。好タイムに狙いを絞ったレースで、あのような異常な条件となれば、これは仕方がなかったのではないか。勝つことをプライオリティとしたレースなら、当然そのようなレースを彼女はしたのだろうが、失速したのは高橋だけではなかった。「市民マラソンの部でも、自信があって飛ばした人ほど、後半自滅した」とも、聞いている。

 ともあれ、タイム失格者が6割もいれば、すべては混乱する。もちろん、理屈の上では運営側の責任が追及される。しかしそれがすべてではない。スポーツは法廷ではない。参加者からは不満の声も事実出たが、ドラマはそれだけではなかった。

 「そりゃあ、給水所で水がなければ困りますよ、でも怒るだけでは走れないでしょう、そもそも昔は水なんか飲まなかったんだから。コップの底1センチしか水が入っていない、でも運良くそれを取ったランナーは、全部飲みたいという本能の欲求をぐっと抑えて、周囲を見渡して、苦しそうな人を探して、わざわざそっちにコースを変えて差し出したりしたんです。苦しいときほど、人間性って、出ますね。見知らぬ同士の水のやりとり、両方とも一生忘れないでしょうね、ああいうのは。沿道でね、そういうの見ていて、涙ぐんでしまって、水、水って叫びながら、コンビニに走って、水買って、ハイ飲んで、飲んでと、自分とは全く関係のないランナーに差し出したおばさんもいたんです。それを、数人ではなく、十数人で回して飲んだんですよ、走りながら。そういうのって、泣いちゃいませんか?私、走りながら、自分の番の水飲みながら、泣いちゃいましたよ。せっかくのが、しょっぱくなっちゃって(笑い)。だから、水がなくて大変だったけど、そういう極限状況での貴重な体験もあったわけですよ。市民マラソンらしいレースだった、そう思いますね。完走できなかったけど、走るって、天気も相手ですからね」。

 レース中、他のランナーからスポンジや水を受け取るのは、違反であり、失格である。それは最近、黙認されているが、沿道から見ず知らずの人から善意を受け取ったら、ルールでは明白な違反だ。

 では、泣いちゃう話は、実は失格話なのか。

 失格、万歳。

著者の言葉
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 【郵送宛先】 郵便番号104・8055 日刊スポーツ新聞社 編集局 後藤新弥

著者プロフィル
 後藤新弥(ごとう・しんや) 日刊スポーツ編集委員、57歳。ICU卒。記者時代は海外スポーツなどを担当。CS放送・朝日ニュースターでは「日刊ワイド・後藤新弥のスポーツ・online」(土曜深夜1時5分から1時間。日曜日の朝7時5分から再放送)なども。
 本紙連載コラム「DAYS’」でミズノ・スポーツライター賞受賞。趣味はシー・カヤック、100メートル走など。なお、次ページにプロフィル詳細を掲載しました。
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