F1日本GP過去の歴史

【1987年11月2日付本紙より】

中嶋悟熱走6位! 地元・鈴鹿で発奮!

 ◇11月1日・午後2時◇決勝51周◇三重・鈴鹿サーキット(1周5.85943キロ)◇出走25台(完走15台)◇観衆11万2000人◇曇り◇気温15・4度

 スタンド総立ちの大声援を受けて、期待の中嶋悟(34=ロータス・ホンダ)が激走。攻めの走りで予選11位から3台を抜き、世界王座を決めているピケ(ウィリアムズ・ホンダ)らのリタイアもあって見事6位に入賞を果たした。一度も首位を譲らずに走り切ったフェラーリ車のベルガー(28=オーストリア)が今季F1初V。中嶋が首位と同一周回でゴールしたのも、これが初の快挙で、世界第一線ドライバーの真の仲間入りを果たしたといえる。2位はセナ。15日の「オーストラリアGP」で今季のF1はフィナーレを飾る。

スタンド総立ち

 最終コーナーから立ち上がってきた中嶋のマシンに、スタンドが総立ちになった大観衆の目がクギづけになった。33周目にかかる直線。ベネトンのファビの真後ろにつけていた中嶋が、スッと黄色いマシンを右に滑らせると、あっという間に抜き去っていた。待望の6位を自らの手でつかみ取った瞬間だ。先行する2台を抜き、今季7位の実力者・ファビの後ろについたのが19周目。追い抜きポイントの少ない鈴鹿で最高の見せ場をつくった。「やったぜ!」。まるで自分が世界王者になったような誇りと喜びの声が、コース全域にどよめいた。

 今季予選では最高の11番グリッドからスタートだった。13年間走り慣れたホームコースに、世界のトップドライバーの仲間入りをして帰って来た。「1年ぶりに会う人たちから“頑張って”と言われ、プレッシャーが大きかった」という。期待を165センチ、53キロの小柄な体に潔く背負って、敢然とレースを戦った。

 ファビを抜いた直後には、タイヤの摩耗で接地力が低下した。スピードを上げられず、ファビともう1台に抜かれ一時は後退した。しかし、2度目のタイヤ交換をすれば、順位は大幅にダウンする。中嶋はじっと耐え、残り1周でチーバーのガス欠などにより再び6位に上がり、そのままチェッカーを受けた。

10キロのハンディも

 「今年一番のいいレースかもしれないね。とにかくホッとしたよ」。そう言って、コップの水を飲み干したが、体力を使い果たした中嶋は、イスから立ち上がるのもつらそうに顔をしかめた。ロータスのNO・2ドライバーとして、日本人初のF1フル参戦。同僚のセナとは待遇やマシンの面で大きなハンディがあった。中嶋の車体にはテレビ用の小型カメラがつけられ、機材分の10キロの重さもプラスされていた。オーナーが中嶋に相談なくシーズン前に決めていたものだ。厳しい条件の中で、マシンを壊さないことを目標に走り続けてきたが、この鈴鹿では話が違う。ロータスとの契約は来年限り。地元の中嶋がどんな走りをするかは、有能なドライバーをスカウトするF1チーム関係者の最も注目するところだった。中嶋は立派に答えを出して見せた。ファンは満足した。

 トップを独走したベルガーは28歳で、すでに海運会社のオーナーで大富豪。それもF1で築き上げた地位だ。セナと、87年ワールドチャンピオンの決定したネルソン・ピケ(35=ブラジル、ウィリアムズ・ホンダ)の激しいデッドヒートも中嶋とともにレースを盛り上げた。 【桝田】

順位 ドライバー チーム・エンジン タイム
G・ベルガー フェラーリ 1時間32分58秒072
A・セナ ロータス・ホンダ 1時間33分15秒456
S・ヨハンソン マクラーレン・ポルシェ 1時間33分15秒766
M・アルポレート フェラーリ 1時間34分18秒513
T・ブーツェン ベネトン・フォード 1時間34分23秒648
中嶋 悟 ロータス・ホンダ 1時間34分34秒551
A・プロスト マクラーレン・ポルシェ 1周遅れ
J・パーマー ティレル・フォード 1周遅れ
E・チーバー アロウズ・メガトロン 1周遅れ
10 D・ワーウィック アロウズ・メガトロン 1周遅れ
11 R・パトレーゼ ブラバム・BMW 2周遅れ
12 P・ストレイフ ティレル・フォード 2周遅れ
13 P・ギンザーニ リジェ・メガトロン 3周遅れ
14 Y・ダルマス ローラ・フォード 4周遅れ
15 N・ピケ ウィリアムズ・ホンダ 5周遅れ
  R・アルヌー リジェ・メガトロン 45周目リタイア
  A・カフィ オゼッラ・アルファロメオ 44周目リタイア
  R・モレノ AGS・フォード 39周目リタイア
  A・ナニーニト ミナルディ・モトーリモデルニ 36周目リタイア
  M・プランドル ザクスピード 33周目リタイア
  A・デ・チェリザス ブラバム・BMW 26周目リタイア
  T・ファビ ベネトン・フォード 17周目リタイア
  C・ダナー ザクスピード 14周目リタイア
  I・カペリ マーチ・フォード 14周目リタイア
  A・カンポス ミナルディ・モトーリモデルニ 3周目リタイア
  P・アリオー ローラ・フォード 1周目リタイア
1位の平均時速は192・861キロ
最速ラップはプロストの1分43秒844(35周目)平均時速は203.131キロ
タイヤは全車グッドイヤー。


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