F1日本GP過去の歴史

【1995年10月30日付本紙より】

シューマッハー、マンセルに並ぶ年間最多勝

 ◇10月29日◇三重・鈴鹿サーキット(一周5・864キロ)全53周◇参加23台、完走12台◇曇り

 ミハエル・シューマッハー(26=ベネトン・ルノー)が1時間36分52秒930でポール・ツー・ウインの完ぺきなレースで前週のパシフィックGPに続いて3週連続優勝を果たした。これで今季9勝目、1992年ナイジェル・マンセルが記録した年間最多勝に並び、最終戦の豪州GP(11月12日決勝)では新記録に挑戦する。ベネトンはコンストラクターズ・ポイントを137とし、最終戦を待たずに初の同部門総合優勝を決めた。

真の王者に

 だれも文句のつけようのない強さだった。予選初日の暫定PP、2日目のPP獲得、そして決勝では最速ラップをマークするなど、ピットストップ中の一時的順位を除けば、シューマッハーがトップを譲ることは一度もなかった。

 ◆強さ(1) 最速ラップも獲得してのポール・ツー・ウインは通算5回目。これは現役ドライバーの中で最多。最近のレーサーではプロストの8回、セナの7回に次ぐもので、歴代5位に浮上した。これこそ速さとレース巧者の両面を併せ持つ証明だ。

 プレッシャーがかかったのは序盤だけだった。ハーフ・ウエット(やや湿った)の路面でのレースだったが、7周目終了で早くもスリックタイヤに履きかえ、強引な走りで迫ってくるアレジの追走にも慌てない。「タイヤを替えるのは周囲の状況を見てからにしようとした。ハーバートの様子を見て交換の時期を決めた」シューマッハーは、次の周でタイヤ交換に入ったチームメートのハーバートの状況を判断材料にした。

 ◆強さ(2) 戦略面、運転技術ともにほとんどミスがない。今季リタイアは3回だが、そのうち2回はヒルに追突されてのもので、自ら止まったのは1回だけだ。この日も終盤、スプーンカーブにオイルが流れ、ヒルら他のレーサーが次々コースアウトしたが、「無線で注意もあったし、僕には何も問題なかった」と振り返った。

 19周目には1・018秒差に詰めてきていたアレジが、マシンへの負担のかけ過ぎから、25周目にエンジンから白煙を上げてリタイア。自滅したところで楽勝ペースが漂い出す。

 ◆強さ(3) ピットストップの前後に速さが出せるのも特徴だ。この日2回目のピットインは31周目終了時点だったが、直前の30周目で1分43秒369と最速ラップを更新、再びコースに戻れば33周目に1分42秒976、これが最終的な最速ラップとなった。タイヤが古くても新しくても自在に速さを生み出せる。

 ウィリアムズ勢もリタイアしてからの残り12周は、ひたすら丁寧な走りに徹しながら、後続と30秒近くの差をつけて逃げ切った。昨年は、セナの事故死、ヒルと1ポイント差の総合Vで、その実力に「?」もついたヤングが、いよいよ真の王者に君臨し始めた。【岡田美奈】

(写真=バックストレッチを快走するシューマッハー運転のベネトン・ルノー(上)。表彰式でガッツポーズを見せるM・シューマッハー(中央右)と、(左から)初のチーム総合優勝を獲得したベネトンチームのブリアトーレ監督、2位のM・ハッキネン、3位のJ・ハーバート(写真・右))


来季のマクラーレン第1ドライバーの座をかけた戦い

 ともに来季からのマクラーレンに移籍する二人が明暗を分けた。盲腸手術の影響で2戦ぶりの出場となるハッキネンが2位に入ったが、クルサードは40周目でリタイアした。ハッキネンは「レース中ずっとデビッドをマークしていた。彼のリタイアは正直、ラッキーと思った」。移籍先での第1ドライバーの座をかけた戦いが、すでに始まっているからだ。

 また今季2勝を挙げながら来季のシートが決定していない3位ハーバートは「複数のオファーはある。だが、自分は選ばれるよりは選ぶ立場でいたいから(未決定)」と表彰台では笑顔を見せながらも、慎重な姿勢をを崩さなかった。


井上隆智穂 完走12位

 日本人で唯一完走した12位の井上隆智穂(32=アロウズ・ハート)はレース後、作戦ミスを悔やんだ。「もう2、3ラップ速く、スリックタイヤに替えていれば、順位も少しは上がったと思うんだが」。昨年の日本GPからF1デビューを飾り、ちょうど1年。上位の壁に泣く井上は「来年のことは何も考えてないが、もう少しエンジンの回るチームに行きたい気持ちもある」と話した。

(写真=日本人で唯一完走したアロウズ・ハートの井上隆智穂)


片山右京 13周目で無念

13周目のダンロップコーナー出口に差しかかった瞬間、片山右京(32=ティレル・ヤマハ)のマシンはスピン。右側からタイヤバリアに激突、無念のリタイアとなった。この日午前のウオームアップ走行で左手親指のじん帯を伸ばし、13番グリッドからの決勝は、痛み止めの注射とテーピングを施しての強行出場だった。「(アクセルの)踏み出しが速かった。左手のことで集中力が欠如して……」。今季15戦中11度目のリタイアを喫した鈴鹿で、右京は頭を下げるだけだった。

(写真=強行出場も13周目にリタイアを喫したティレル・ヤマハの片山右京)


鈴木亜久里 きょう退院も

 前日(28日)の予選でクラッシュ、左第四ろっ骨の骨折、それに伴う左肺挫傷で鈴鹿市内の鈴鹿中央総合病院に入院していた鈴木亜久里(35=リジェ・無限ホンダ)は、この日も病院内(一般病棟)で安静に過ごした。完全看護の同病院で、スタッフは朝から見舞いに訪れた。秋田史マネジャー(39)は「食事も普通だし、至って元気」と話した。鈴木は「3日間の安静が必要」と診断されており、きょう30日にCTスキャンなどの検査を行い、結果次第では即退院の運びとなる。

鈴木亜久里 ろっ骨骨折で決勝欠場、引退へ

【10月29日付紙面より】

 ◇28日◇三重・鈴鹿サーキット(一周5・864キロ)◇参加24台◇曇り

 鈴木亜久里(35=リジェ・無限ホンダ)がラストランを前にクラッシュ、不完全燃焼のままF1人生に終止符を打つことになった。予選終了10分前ごろ、S字カーブの入り口でスピン、タイヤバリアに激突した。ヘリコプターで鈴鹿市内の病院に運ばれ、第四ろっ骨骨折などのため、3日間の安静が必要と診断され入院した。今日28日の決勝は欠場となった。関係者によれば鈴木はこの日、今大会を最後にF1からの撤退を決意。有終の美に向け意気込んでいたが、最悪の幕切れになってしまった。

(写真=リジェ・無限ホンダの鈴木亜久里は、引退レースとなるはずだった地元GPの予選で無念のクラッシュ、そのままF1に別れを告げた)

 男のケジメ、F1人生の集大成を12万人のファンの前で見せるはずだった。3位で表彰台に上がった5年前の再現に挑戦するつもりだった。だが、鈴木の情熱と覚悟を込めたラストランは実現しない。「せっかくの地元GPで予選も頑張っていたのに残念。ファンの皆さんに申し訳ない」。鈴木は入院先の鈴鹿中央病院で、秋田史マネジャー(39)を通じてコメントした。足も動く、自分自身は元気なつもりなのにドクターストップ。悔しいが、あきらめるしかなかった。

 サーキットに衝撃が走ったのは予選終了約10分前の午後1時50分。鈴木がクラッシュした。第2コーナーを抜け、S字カーブの入り口で、右側の前後両輪がコースをはみ出て芝に乗った。次の瞬間マシンがスピン、タイヤバリアへ激突し、再びコースまではじき飛ばされた。マシンが止まると、鈴木はすぐにステアリングを外した。意識はあるが、それから動かない。自分でマシンから出られない。赤旗中断となり、救急隊が駆けつけた。

 クラッシュから6分たった1時56分、やっと鈴木がコックピットから運び出され、タンカに乗せられて、メディカルセンターに直行、2時10分にヘリで病院に向かった。

 診断は「第四ろっ骨の骨折、これを原因と思われる軽度の肺挫傷。脊髄(せきずい)には異常は認められない。3日間の入院安静は必要」というものだった。ムチウチ症のひどいもので、完治には1週間から1カ月かかる。30日に再検査して退院するかどうかを決定する。

 関係者によると、この日、鈴木は今大会を最後にF1撤退を決意し、予選終了後にも発表する予定だった。午前のフリー走行後には、「クルマはいい方向に向かっている」と、スッキリした表情で話していた。1988年この鈴鹿でF1デビュー、完走16位からスタートし、中嶋悟とともに日本にF1ブームをもたらした鈴木。通算72戦目の最終レースは、寂しすぎる幕切れとなった。【岡田美奈】

◆今季の主な事故

 ▽鈴木は2度目 ドイツGP初日予選中に鈴木はクラッシュ、腰を強打してヘリで病院に運ばれた。この時は2日目のフリー走行前にメディカル検査を受け、出走。予選18位も決勝では6位の力走でポイントゲット。

 ▽片山は1戦欠場 ポルトガルGP決勝で片山が他車と接触、マシンが大破し、ヘリで病院に運ばれた。ムチウチと診断され24時間の安静、入院が命じられた。翌日には退院したが、次週の欧州GPは欠場。先週のパシフィックGPが復帰戦となった。

 ▽ヒルとシューマッハーは2度接触 イギリスGP、イタリアGPでは優勝争いしていたヒルとシューマッハーが接触リタイア。両者ともケガはなかったが、精神的な亀裂が深まった。ヒルは欧州GP決勝でもクラッシュし、右足下部を骨折した。


順位 ドライバー チーム・エンジン タイム
1 M・シューマッハー ベネトン・ルノー 1時間36分52秒930
2 M・ハッキネン マクラーレン・メルセデス 1時間37分12秒267
3 J・ハーバート ベネトン・ルノー 1時間38分16秒734
4 E・アーバイン ジョーダン・プジョー 1時間38分35秒066
5 O・パニス リジェ・無限ホンダ 1周遅れ
6 M・サロ ティレル・ヤマハ 1周遅れ
7 M・ブランデル マクラーレン・メルセデス 1周遅れ
8 H−H・フレンツェン ザウバー・フォード 1周遅れ
9 L・バドエル ミナルディ・フォード 2周遅れ
10 K・ベンドリンガー ザウバー・フォード 2周遅れ
11 P・ラミー ミナルディ・フォード 2周遅れ
12 井上隆智穂 アロウズ・ハート 2周遅れ
  D・ヒル ウィリアムズ・ルノー 41周目リタイア
  D・クルサード ウィリアムズ・ルノー 40周目リタイア
  P・ディニス フォルティ・フォード 33周目リタイア
  J・アレジ フェラーリ 25周目リタイア
  A・モンテルミニ パシフィック・フォード 24周目リタイア
  G・ベルガー フェラーリ 17周目リタイア
  R・バリチェロ ジョーダン・プジョー 16周目リタイア
  片山右京 ティレル・ヤマハ 13周目リタイア
  B・ガショー パシフィック・フォード 7周目リタイア
  R・モレノ フォルティ・フォード 2周目リタイア
  G・モルビデッリ アロウズ・ハート 1周目リタイア
1位の平均時速は192.350キロ
最速ラップはシューマッハーの1分42秒976(33周目)平均時速は205.003キロ
タイヤは全車グッドイヤー


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