F1日本GP過去の歴史

【2002年10月14日付本紙より】

琢磨5位!日本人5年ぶりポイント獲得!

 ◇決勝◇13日◇三重・鈴鹿サーキット(1周5・821キロ×53周)◇参加19台◇晴れ◇観衆15万5000人

 佐藤琢磨(25=ジョーダン・ホンダ)が、5位で初の入賞を果たした。日本人ドライバーの入賞は、97年ハンガリーGPの中野信治以来5年ぶり。自己最高の7番手からスタートした佐藤は、一時は9位に落ちながらも終盤5位まで浮上。日本GP決勝最多タイの15万5000人の大観衆を熱狂させた。王者ミハエル・シューマッハー(33=フェラーリ)が今季11勝目を挙げ、シーズン全戦表彰台に立った。地元デビューのトヨタは、ミカ・サロが8位に入った。

 佐藤がチェッカーを受けると、15万人をのみ込んだスタンドが揺れた。拍手、歓声、地響き。高木虎之介以来、3年ぶりに地元GPに帰ってきた日本人ドライバーは「皆さんの応援のおかげです! ありがとうございました!」とマイクを通じて叫んだ。ファンの絶叫がメーンストレートを駆け抜けた。90年に鈴木亜久里が日本人初の3位表彰台に乗った時の感動と興奮が、12年ぶりに復活した。

 21周後の1回目のピットストップの間にルノー2台に抜かれ、9位に転落。しかし、燃料を少なめにして追走し、34周後の2度目のピット後に6位の入賞圏に入った。「スタート後はタイヤをいたわるセッティングで、車がうまく曲がらなかった。ピットでウイングを調整し、追いかけた」。終盤で3位のR・シューマッハーがリタイア(完走扱い)する幸運で5位浮上。日本GPの日本人入賞は鈴木3位、中嶋6位の90年以来だった。

 今季はマシントラブルの連続。クラッシュにも巻き込まれ、下位に沈むレースが続いた。それでも完走狙いに逃げずに、アクセル全開の信条「FLAT OUT(全開)」を変えなかった。コーナーを曲がる時に必要なダウンフォース(空力でマシンを下向きに抑えつける力)を極力減らして、ストレートでの最高速を高める努力を続けてきた。

 高速コースの第15戦イタリアGPで、自分の好みのマシンに仕上がってきた。2週間前の米国GPでは、フリー走行初日で王者M・シューマッハーの背後を走った。ついていけた。最速ラップを刻むために必要なライン取りや加速を肌で感じた。ホンダの坂井典次エンジニアは「ホンダエンジンで走る4人で、決勝の第1コーナーと130Rを全開(時速約260キロ)だったのは琢磨だけ」と舌を巻いた。

 これまで入賞がなく、契約2年目の来季のシートを確信できなかったが、雑音を封印する5位完走。「泣かなかったですよ。まだまだこれからですから」。日本人初PP、初勝利…。来年はジョーダン・コスワースのマシンで夢の続きを追いかける。【柴田寛人】

 ジョーダンのエディ・ジョーダン代表(英国) F1で勝つ可能性を持つ日本人ドライバーがいることを証明した。日本人や企業が今日の結果に何かを感じてもらいたい。琢磨にとってベストの将来を考えてほしい。

 ◆佐藤琢磨(さとう・たくま) 1977年(昭和52年)1月28日、東京・新宿区生まれ。東京・町田の和光高3年時に自転車部設立、94年高校総体のポイントレースで優勝。早大進学後、96年インカレ4キロ速度競走で優勝。同年からカートを始め、97年鈴鹿レーシングスクールを首席で卒業、ホンダの奨学金を得た。98年に渡英、昨年の英国F3で総合優勝。今季からジョーダンの正ドライバー。163センチ、60キロ。父は弁護士の和利さん、母は舞台女優の昭子さん。兄弟はなし。

 (写真・上=自己最高の5位でフィニッシュした佐藤琢磨は、歓喜のクルーに迎えられると自らも拍手でゴールイン。写真・下=グランドスタンドに向けダッシュする佐藤=撮影・宮崎幸一)


M・シューマッハー11勝!全戦表彰台

 今季11度目の表彰台の一番上で、M・シューマッハーは何度もガッツポーズを繰り返した。序盤から飛ばした。20周目までに2位バリチェロに4秒の差をつける余裕のレース運びで、今季5度目のポール・ツー・ウイン。「日本のファンにとっては最高のレースだったはず。僕と佐藤という2人の勝者を見られたんだからね」。日本GP5勝目、通算64勝目。チームも88年マクラーレン・ホンダに並ぶ年間最多となる15勝目を挙げた。それでも「来年は他のチームとの差が縮まるはず」と、さらに上を目指して話した。


サロ、追い上げ8位健闘

 地元デビュー戦のトヨタは、サロが予選13番手から8位に追い上げる健闘をみせた。マクニッシュが公式予選のクラッシュで痛めた右ひざの影響で出場を断念したため、チームの期待を一身に背負って走り抜いた。「最高のレースとはいえなかったが、トヨタでの最後のレースを完走できて満足している」。サロはチーム参戦1年目を7度目のトップ10で締めくくり、笑顔が絶えなかった。


ブリヂストン、通算70勝!

 ブリヂストンがF1参戦通算100レース目で、通算70勝を母国GPで飾った。フェラーリのワンツーフィニッシュに、佐藤の5位入賞と最高のレースになった。菅沼寿夫技術支配人は「重要なシーズン最終戦を勝利で締めくくり、今後の大きな励みになる。日本人としてもタイヤ供給者としても琢磨の入賞はうれしい」と大喜びだった。


事故で前座レース中止

 前座レースの「フォーミュラドリーム第9戦」で事故が起き、レースそのものがシリーズ初の中止となった。レース2周目の高速スプーンカーブで、招待選手の長屋宏和(22)が先行マシンに乗り上げた。宙を舞うように回転した車体はフェンスを飛び越えて大破。長屋は意識不明のまま鈴鹿市内の病院に運ばれた。その後意識は戻り、脳波にも異常はなかったが、第6けい椎骨折の重傷を負った。


15万5000人!最多タイ観衆記録

 この日の観衆15万5000人は、94年と並ぶ決勝の最多観客記録となった。


順位 車番 ドライバー チーム・エンジン タイヤ 周回 トップとの差 最速タイム(周)
1 1 M・シューマッハー フェラーリ ブリヂストン 53 1時間26分59秒698 1:36.125(15周目)
2 2 バリチェロ フェラーリ ブリヂストン 53 0.506 1:36.345(23周目)
3 4 ライコネン マクラーレン・メルセデス ミシュラン 53 23.292 1:36.848(46周目)
4 6 モントーヤ ウイリアムズ・BMW ミシュラン 53 36.275 1:36.757(38周目)
5 10 佐藤琢磨 ジョーダン・ホンダ ブリヂストン 53 1:22.694 1:37.840(35周目)
6 15 バトン ルノー ミシュラン 52 1周遅れ 1:38.046(31周目)
7 7 ハイドフェルト ザウバー・ペトロナス ブリヂストン 52 1周遅れ 1:38.534(21周目)
8 24 サロ トヨタ ミシュラン 52 1周遅れ 1:37.761(20周目)
9 16 アーバイン ジャガー・フォード ミシュラン 52 1周遅れ 1:38.647(40周目)
10 23 ウェバー ミナルディ・アジアテック ミシュラン 51 2周遅れ 1:40.232(51周目)
11 5 R・シューマッハー ウイリアムズ・BMW ミシュラン 48 DNF 1:36.125(15周目)
  17 デラロサ ジャガー・フォード ミシュラン 39 DNF 1:38.836(35周目)
  9 フィジケラ ジョーダン・ホンダ ブリヂストン 37 DNF 1:38.217(23周目)
  14 トゥルーリ ルノー ミシュラン 32 DNF 1:38.000(30周目)
  11 ビルヌーブ BAR・ホンダ ブリヂストン 27 DNF 1:38.058(24周目)
  22 ユーン ミナルディ・アジアテック ミシュラン 14 DNF 1:40.937( 6周目)
  12 パニス BAR・ホンダ ブリヂストン 8 DNF 1:42.082( 4周目)
  3 クルサード マクラーレン・メルセデス ミシュラン 7 DNF 1:38.251( 6周目)
  8 マッサ ザウバー・ペトロナス ブリヂストン 3 DNF 1:39.954( 3周目)
最速ラップはM・シューマッハーの1位の1:36.125(15周目、平均時速は218.003キロ)。
1位の平均時速は212.644キロ。マクニッシュ(トヨタ)は欠場。


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