北京五輪のフィギュアスケートは4日、首都体育館で団体戦が始まる。採用3大会目の同種目で初のメダルを狙う日本は3日、18年平昌五輪銀メダル宇野昌磨(24=トヨタ自動車)を、前回に続き男子ショートプログラム(SP)で起用すると発表。指導を受けるステファン・ランビエル氏(36)が北京入り前に新型コロナウイルスの陽性判定となり、コーチ不在の中、攻めの演技で仲間に勢いをもたらす。

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五輪マークで彩られた取材エリアでも、宇野は変わらなかった。前日に北京入りし、本番会場で初めて乗った氷は「跳びにくいというのは感じなかった」。そして自らの出番にふれた。

「前回は日本が団体戦3位以内に入るのは『結構、難しいんじゃないか』と、みんな分かっていたと思う。ただ、今回は狙えるじゃないですか。しかも1番手。最善は尽くしたいと思いますし、ダメだったら、真剣に謝りたいと思います」

独特の雰囲気を知っている。4年前、団体戦SPで103・25点を記録し、2位に14・76点差をつける首位で日本に最高の10点をもたらせた。だが現在、世界選手権3連覇中のチェン(米国)が4位にとどまり「繰り上がりで偶然」と笑う。今回はペアの三浦璃来、木原龍一組の急成長で、初のメダルが視野に入る。素直な思いを隠さない男は「今回も団体の順位的に『1位(金メダル)は難しいのかな』とは考えている。僕がやらないといけないのは、下の順位を取りすぎない。ただ、どうなるかは僕にも分からない」と明かした上で、力強く言い切った。

「あまり失敗を恐れた演技はしたくない。『失敗したくない』と思ったジャンプの成功より、ちゃんと練習通り挑めての失敗の方が、絶対に成長につながる」

ランビエル・コーチが拠点のスイスでコロナ陽性となり、3日ほど前に団体戦に間に合わないと聞いた。最新の検査は陰性といい、同コーチは数日後の渡航を目指す。難しい状況下でも「選手、コーチが大会にかける思いに、優劣があるわけではない。選手が試合に出られないぐらい、悔しい気持ちがあると思う。一刻も早く乗り越えて、無事に来られることを願っています」と最初に師を思った。

午後2時45分に始まった、この日最後の練習。わずか35分間で4回転ジャンプを22本着氷させた。他を寄せ付けない様子で跳び続け、それでも「まだ本調子じゃない」と言った。覚悟は決まっている。【松本航】

 

◆平昌五輪の宇野VTR 今大会同様に日本の先陣を切って団体戦SPに臨んだ。冒頭の4回転フリップは左手を氷についたが、4回転-3回転の連続トーループ、3回転半を決めて103・25点。初の五輪で首位に立ち「特別な感情は湧き出てこなかったです。最後まで自分の演技ができた」と振り返った。7日後には個人のSPで104・17点の3位発進。フリー3位の202・73点を記録し、合計306・90点で銀メダルを獲得した。2連覇の羽生結弦(ANA)とワンツーフィニッシュとし「順位がうれしいんじゃなくて、自分の演技ができたことがうれしかった」と喜んだ。