ノルディックスキー・ジャンプ男子個人ノーマルヒルで、小林陵侑(25=土屋ホーム)が104・5メートル、99・5メートルの合計275・0点で金メダルを獲得した。

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小林陵侑は約2年半前に書き込んだ未来予想図「小林陵侑ウィキペディア」を実現させた。

飛躍の陰には脳波トレーニングの成果がある。18年5月から所属する土屋ホームで取り入れた。担当する日本脳波トレーニング協会の理事長を務める林愛理さん(27)は脳波を測定して「(興奮や緊張をうむ)ハイベータ波が強くて、緊張や焦りを感じやすいタイプ」と分析。本番で実力を発揮できない原因の1つだった“あがり症”克服へのアプローチが始まった。

土屋ホーム全社員約1000人の前で大会報告する際、「頭が真っ白になって話そうと考えていた内容をど忘れして短いあいさつになっちゃった」(小林陵)ということもある。カウンセリングと脳波を測定しながら脳内を変えるトレーニングをした。集中時に出るローベータ波を試合時に強く出せるように意識づけ。トレーニング開始後の18-19年にW杯個人総合優勝を果たし「リラックスして競技に臨めるようになった」と振り返る。

18、19年の2度、林さんから「自分のウィキペディア」を書くように指示された。インターネットの百科事典にどんなことを書かれたいか。A4用紙に経歴、実績、プライベート、出演メディアの4項目を手書きした。実績欄に最初は「北京五輪で銀メダル」と記した。1年後、W杯覇者となって、自信を持って書き換えた。「北京五輪で金メダル」。現実の小林陵侑ウィキペディアにも書かれることになった。あこがれて書いた「レッドブルと契約」も実現させている。あとは出演メディアに書いた「逃走中」(フジテレビ系列)からのオファーを待つだけだ。【保坂果那】