1964年10月10日、アジアで初の五輪が東京で開幕した。半世紀の時を経て変わりゆく街の中に、懐かしい風景は残る。2020年東京五輪・パラリンピック大会開催が決定した13年「オッギーの五輪散歩」で当時のレガシー(遺産)を回った。あれから4年、今度は20年東京五輪のレガシーとなる地とともに「新旧五輪散歩」をしてみる。秋の1日、64年を懐かしみ、20年を待つために、東京の街を歩いてみませんか。

スタート地点となるJR原宿駅を出発する荻島弘一編集委員
スタート地点となるJR原宿駅を出発する荻島弘一編集委員

■20年先取り散歩<目玉巡る7キロ2時間半>

 20年東京五輪を先取りする散歩のスタートは「勝どき駅」はどうだろう。南に向かうと、すぐに見えるのは選手村建設地。さらに豊洲市場を越えると、左側に有明アリーナ。大会後はバレーやバスケなど球技での活用が期待されている。

 台場方面に進むと、お台場海浜公園がある。ビーチバレー会場の潮風公園を回って、最後は青海アーバンスポーツ会場。スケートボードやクライミングを中心に若者が集まる大会の「目玉」になるかもしれない。海風を感じながらの散歩は爽快だが、橋のアップダウンがあるため意外と脚力は必要かもしれない。

晴海選手村予定地
晴海選手村予定地

(1)晴海選手村予定地

 晴海地区に東京ドーム3個分の敷地で建設中。まだ基礎工事中だけど、晴海客船ターミナルから見ることができるよ。大会後はマンションとしてリニューアルされるんだ。

有明アリーナ予定地
有明アリーナ予定地

(2)有明アリーナ予定地

 会場見直しで紛糾したけれど、予定通り着工。豊洲市場から運河を越えると、左手に見えてくる。バレーボールやバスケットボールの「新聖地」となりそうだね。

有明テニスの森
有明テニスの森

(3)有明テニスの森

 有明コロシアムを含み49面を有するテニスの「聖地」。東京五輪では練習用コートを含む37面にしてテニス競技が行われるんだ。パラでは車いすテニスの会場だよ。

お台場海浜公園
お台場海浜公園

(4)お台場海浜公園

 水質が問題になっているけど、レインボーブリッジを望む景観は「ザ・トーキョー」という感じ。15日には、ここで16回目のトライアスロン日本選手権もあるよ。

青海アーバンスポーツ会場
青海アーバンスポーツ会場

(5)青海アーバンスポーツ会場

 今は駐車場だけど、仮設会場でスケボーとクライミングが行われるんだ。ガンガンに音楽が鳴って、DJが盛り上げる。若者が集まる場になるかもね。

スタート地点となるJR原宿駅を出発する荻島弘一編集委員
スタート地点となるJR原宿駅を出発する荻島弘一編集委員

■64年レガシー散歩<熱気が残る8キロ3時間>

 64年東京五輪を懐かしむ散歩は、主会場の国立競技場からJR総武線、山手線で2駅の原宿駅スタート。隣接する代々木公園が当時の選手村で多くのレガシーが残る。選手村を南北に分ける「ロンドン通り」は80年代に歩行者天国として若者が集まった。竹の子族やローラー族もここが発祥だ。

 工事中の渋谷公会堂を右手に見ながら公園通りを下り、渋谷駅で右折。国道246号(玉川通り)を駒沢方面に進む。東京五輪を機に拡幅された通りは、二子玉川園間まで路面電車の東急玉川線(玉電)が走るのどかな道だった。今は頭上に首都高、地下に東急田園都市線で人と車だらけ。渋谷から駒沢公園は約5キロ、歩いても1時間半だが、電車なら3駅で到着する。

 駒沢公園は東京五輪「第2会場」。バレーボールやレスリングなどで連日沸き返った。今は大会開催以外でも多くの人がランニングやサイクリングを楽しみ、グルメなどイベントも多い。今年も体育の日前後にはスポーツイベントがめじろ押し。代々木公園も駒沢公園も、東京五輪が残した大切なレガシー。都民の「スポーツの場、憩いの場」なのだ。

JR原宿駅から代々木公園につながる五輪橋
JR原宿駅から代々木公園につながる五輪橋

(1)五輪橋

 山手線を越える橋をよく見ると、両側上部に青い地球。「お家芸」のマラソン、体操、柔道のレリーフもあるよ。多くの外国人選手が渡った選手村への「入り口」だね。

オランダ選手が利用した選手村宿舎
オランダ選手が利用した選手村宿舎

(2)代々木公園・選手村宿舎

 公園を入って右に進むと、洋画に出てくるような建物。ワシントンハイツをそのまま利用した宿舎だった。オランダ選手団が使ったもので、ヘーシンクが寝ていたかも。

織田フィールド
織田フィールド

(3)織田フィールド

 選手村内にあったトレーニング場で、今も一般のランナーが汗を流しているよ。実は五輪に続くパラリンピックの開会式会場で、車いすの入場行進も行われたんだ。

駒沢公園オリンピック記念塔・聖火台
駒沢公園オリンピック記念塔・聖火台

(4)駒沢公園オリンピック記念塔・聖火台

 国立競技場の聖火台は石巻市にあるけれど、実はもう1つ駒沢公園にもある。五重塔を模して交通管制塔の役割もしたオリンピック塔の横で期間中、火をともしていたんだ。

駒沢公園・集火台
駒沢公園・集火台

(5)駒沢公園・集火台

 東京五輪の聖火リレーは4コース。10月9日に皇居前で1つにしたんだ。集火式を終えた台はすぐに移転。「お宝」は、陸上競技場入ってすぐ左に静かに置かれているよ。

駒沢屋内球技場
駒沢屋内球技場

(6)駒沢屋内球技場

 東洋の魔女で連日超満員になったけれど第1球技場とともに老朽化で建て替え、今年オープンしたんだ。もちろん、五輪会場の証しの「プレート」は飾られているよ。

駒沢オリンピックギャラリー
駒沢オリンピックギャラリー

(7)駒沢オリンピックギャラリー

 レスリングの「聖地」でもある体育館内に設けられ、当時を知らない子どもたちや懐かしむシニアが訪れる。聖火トーチなど実際に触ることもできるよ。


<遠出プラン マラソンの折り返し点>

○…遠出がしたいのなら、甲州街道(国道20号)ウオーク。20年大会でも使用する東京スタジアム(味スタ)前に、マラソン折り返し点記念碑がある。原宿から片道約18キロ。さらに4キロ西に進むと競歩折り返し点記念碑。当初はここがマラソン折り返し地点だったが、警備負担軽減のため調布に変更。今でも府中の陸上関係者は、変更を悔しがる。


 ◆荻島弘一(おぎしま・ひろかず)1960年(昭35)、東京都生まれ。84年入社、同年10月からスポーツ部勤務。五輪取材は88年ソウル大会からで、サッカー、水泳、柔道などを担当。96年からデスク、日刊スポーツ出版社を経て05年に編集委員として現場に戻る。

2020年先取り散歩コース
2020年先取り散歩コース
1964年レガシー散歩コース
1964年レガシー散歩コース