「明と暗」と言うべきか。先月末、19年ラグビー・ワールドカップ(W杯)以来、1年半ぶりに再始動した日本代表を取材するため大分県別府市を訪れた。3年前のイタリア代表戦の時に利用したJR大分駅北口のカフェで原稿を書いていると、切ない気持ちになった。桜のジャージー姿の大勢のファンが集結したロータリーが、抗原検査所に変わっていた。

ラグビーW杯から20年東京オリンピック(五輪)へ-。誰もが、この流れだと思っただろう。しかし、新型コロナウイルスが五輪1年延期という想定外の事態を招き、全ての歯車が狂った。生活は制限され、人との交流や取材はオンラインが主流となった。

W杯の時は、逆の生活だった。今思うと、一昔前にタイムスリップしたような感覚すら覚える。日本代表が優勝候補のアイルランド代表など強豪を撃破。史上初の8強入りを果たし、感動を呼んだ。ルールを知らない「にわかファン」までもが熱狂し、列島が「ONE TEAM」になった44日間だった。スポーツの力も示され、経済効果はW杯過去最高の6464億円に。海外から24万人以上が訪れ、インバウンド効果が経済的成功を押し上げた。五輪に向けて、運営面などでも貴重な実戦となった。

記者も原稿を書き終えると、同僚や関係者らとビールを片手に祝杯を何度も挙げた。大会期間が長いため体重も4キロ増。違う意味で体を張った取材だった。パブなどでも驚異的なスピードで飲酒する外国人に対抗した。人気だった「必勝」「侍魂」などが印字された漢字鉢巻きを借りて、飲みニケーションを図った。

その5カ月後に五輪延期が決まった。見えない敵を相手に世界中で混乱が生じた。国内では緊急事態宣言が発令され、現在も10都道府県で続いている。ワクチン接種も始まったが、制限ある生活は変わらない。

五輪開幕まで51日。中止を求める世論が広がる中、W杯のような日本中が「ONE TEAM」になることは不可能だろう。理解を得られるベストな選択は、一体何なのか。大分で1杯のコーヒーを飲みながら、明暗を分けたW杯と五輪について深く考えさせられた。【五輪担当 峯岸佑樹】