20年東京五輪・パラリンピックでは国内外からたくさんのお客さまが押し寄せます。大混雑する競技場などでは、ボランティアに対するクレームも予想されます。当然こちら側のミスや手違いによるものには丁重におわびしなければなりませんが、こちら側に落ち度のないクレームにはどう対処すればいいでしょうか。理不尽ないいがかりとはいえ、お客さまが不快な思いをしているのは事実です。クレーム対応はケース・バイ・ケースでマニュアルはありませんが、言い分を言下に否定するのではなく、まずは時間が許す限り、相手の話を聞くことがファーストステップになります。

 その「話を聞く」ときに大切なのが「愛の栗ようかん」です。「あい」=あいづちを打ちながら、「くり」=繰り返して復唱し、「よう」=要約して、「かん」=共感しながら聞くということです。理不尽なクレームをつける人は、気持ちを分かってもらいたい、言い分を聞いてもらいたい人が多く、はき出せば収まる面があります。「愛の栗ようかん」の4つの姿勢で聞くことが効果的なのです。

 「あいづち」は「話を聞いていますよ」というメッセージを伝える行為になります。「はい、はい」「なるほど」などいいかげんなあいづちを打つと火に油を注いでしまうので、「そうですか」「それは大変でしたね」と言葉を選び、表情を加えながらあいづちを打てば、相手に誠意を伝えることができます。

 「繰り返し」は「こういうことで大変な思いをされたのですね」と確認して復唱することで、相手の気持ちに寄り添い、親身になっていることをアピールできます。

 「要約」は話の収拾がつかなくなったときに、整理して要点を絞るために使います。ただ「要するに、あなたが言いたいのはこういうことですね」と勝手にまとめるのはNGです。また「繰り返し」も「要約」も、相手が言い終わらないうちに、話を遮るようなタイミングで復唱したり口にしたりすることは避けなければなりません。

 そして最後に「ご不快な思いをさせてしまいました」と「共感」を表しましょう。

 謝罪をしなくても「愛の栗ようかん」をうまく使って気持ちよく話してもらうことにより、相手の怒りを静めることができます。「おもてなし」の心をもつ聞き上手なボランティアになっていただきたいと思います。(筑波大客員教授)

 ◆江上いずみ 慶大法学部卒。JALの客室乗務員として30年間で約1万9000時間乗務。13年にグローバルマナースプリングス設立。15年から筑波大客員教授。大学や官公庁、企業などで「グローバルマナーとおもてなしの心」などの講演を手がける。