前回はクレーム対応のお話をしました。こちらに非がない理不尽なクレームを受けた場合でも、その相手の話を聞くときの「愛の栗ようかん」は大切であることを説明いたしました。

 ボランティアをしていると、そういったクレームだけではなく、来場したお客さまのさまざまなトラブルやアクシデントに対応しなければならないことも多々あります。そういったお客さまからの相談を受けた場合の第一声もとても大切です。

 例えば「会場に携帯電話を忘れてきてしまったんです!」。切羽詰まった表情で遺失物センターの窓口に駆け込んで来られたお客さまがいらっしゃったとします。ボランティアとしてその窓口に立っていたら、あなたはその方にまずどのような言葉をかけるでしょうか。

 「どの会場ですか? 座席は何番でいらっしゃいましたか?」。すぐに対応するのがベスト。そう考えて、ほとんどの方はこのような第一声をおかけするでしょう。でももし「それは大変でございましたね。さぞ、お困りかと存じます。このあとのお仕事やお約束の時間などは大丈夫ですか?」と相手をいたわる言葉をかけ、相手の時間に対する配慮をする言葉から入っていったらどうでしょう。その上で「すぐにお探しいたしますが、よろしければその間に、待ち合わせのお相手など連絡が必要なところがございましたら、どうぞこちらの電話をお使いになってください」などと続けたら相手は感激してくださるに違いありません。

 今、携帯電話がなくても「連絡する手段がある」ことを認識していただき、焦っている気持ちを少しでも落ち着けていただく。これは、相手の時間を大切に思う心づかいの第1歩です。

 「それは助かります。○時に約束していたので少し遅れることを連絡できます」と多くのお客さまは、ホッとした表情でそうおっしゃるでしょう。

 携帯電話が見つかっても見つからなくても、予定が崩れてしまうのは確実なのですから、遅れるということを連絡したいはずだと想像できるかどうかがポイントです。会場や座席番号をお聞きするのは、その次の段階です。

 ○分ほどお待ちいただくので、その間にできることをやっていただこうと、相手の時間を大切にする心づかいができるボランティアになっていただきたいと思います。(筑波大客員教授)

 ◆江上いずみ 慶大法学部卒。JALの客室乗務員として30年間で約1万9000時間乗務。13年にグローバルマナースプリングス設立。15年から筑波大客員教授。大学や官公庁、企業などで「グローバルマナーとおもてなしの心」などの講演を手がける。