京産大の学生スポーツ新聞記者として取材したことが、空手と関わるようになったきっかけです。最初に試合を見たときは、組手のスピード感に圧倒されました。形も格好いいと感じましたね。初めて空手道部を取材させていただいた当時所属していたのが、女子組手で世界チャンピオンの荒賀知子さん。いま東京オリンピック(五輪)代表を目指している荒賀龍太郎選手のお姉さんで、強いだけでなく、凜(りん)とした姿も印象的でした。

大学卒業後は専門誌での取材や全日本空手道連盟へのサポートを通じ、ますますこの競技が好きになりました。選手たちは元気いっぱいで礼儀正しい。指導者は人格者ばかりで、つたない質問にも丁寧に答えていただき、皆さんの姿を見ていつも襟を正す思いです。

高校まで野球部に所属していました。三塁手で打順は1、2番。体を動かすことは好きですが、空手をやったことは1度もありません。というのも、一流選手の素晴らしい技を見過ぎたことで、自分がやりたいと思うレベルがどんどん高くなってしまって(笑い)。

ただ、サッカー経験がないファンも戦術を語り合うように、空手でも競技経験がない人たちが、選手たちの駆け引きや作戦などを語り合うような日が来るとうれしいですね。それだけ競技としては奥深いスポーツだと感じているし、競技への理解を深められる情報を発信していかなければとも思っています。

会場で初観戦する方には、緊張感を肌で感じていただきたい。組手は一見するとお互いに見合っているような状態でも、足を小刻みに動かして相手を揺さぶったり、あえて後ろに下がって相手を誘い込もうとしたりと、静かで熱い心理戦が展開されています。野球でバッテリーと打者がお互いの狙いを読み合おうとする部分に通じるのでは。そして形では、極限まで集中力を高めた選手が発するオーラを感じ取ってもらえると思います。

東京五輪では当然、日本代表選手の活躍に期待します。そして同じように楽しみなのが、今年11月にドバイで行われる世界選手権。さらに12月には、五輪会場の日本武道館で全日本選手権が開催されます。「祭典」の後も、一流選手たちの戦いは続いていきます。(284人目)