正直、この1年はつらいです。昨年11月に東京オリンピック(五輪)の出場権を獲得してから、五輪決勝の8月6日に照準を合わせていました。(日本勢初の)金メダルを目標に、身を削る思いで毎日12時間以上の練習に励みました。五輪で現役引退と決めて「プラス1年」となって、これまでの積み重ねが一気に消えました。今は、それを乗り越えられる原動力はありません。

昨年12月24日に2年間交際した同僚の男性(28)と結婚しました。2度目の大舞台は夫の姓で出場し、11月に結婚式を挙げる。新婚旅行や出産など、引退後の人生も考えていました。延期を受け、結婚式も来年に変更。思い描いていた計画が全て1年先送りになりました。その分、ショックも大きかったです。

自粛期間中は部屋にこもる時間が増え、今年6月には首の左側を故障しました。このまま引退しようか悩んでいた時、夫が「無理して五輪に出る必要はないと思うよ。やめても良いんだよ」と言ってくれました。この一言が心の治療薬になりました。リハビリ中に気持ちを整理し、金メダルにこだわるのもやめました。今は、五輪に出場できたら良いと切り替えました。「前向きな選手ばかりじゃない」と自身に言い聞かせています。

4年前は、こんなことがありました。リオ五輪の閉会式を終えて選手村に戻るバスの車中で、アーティスティックスイミング(AS)の井村雅代ヘッドコーチに人生相談しました。その日がたまたま私の誕生日の8月22日で「自分がやりたいようにすれば良い。プレッシャーとは、やりがいなんだよ」とのお言葉を頂きました。25歳の最高の誕生日プレゼントでした。

アスリートは孤独です。一番の理解者は自分であり、最終的には自身で全てを決断します。1年の重み。捉え方はさまざまですが、私にとってこんな長い1年はありません。ただ、これも「運命」と受け止めています。(322人目)