オリンピック(五輪)といえば、何と言っても故郷の長野で行われた98年の冬季五輪ですね。まだ中学生だったし、テレビ観戦だったけど、スキージャンプやスピードスケートの清水宏保さん、ショートトラックの西谷岳文さんたちの金メダルの印象が強烈に残っています。

僕も体育の授業にスケートがある環境で育ち、子供のころからクラブチームに入っていました。中学から本格的に取り組み、社会人2年目の24歳の時に初めて五輪代表に選ばれました。ショートトラックは転倒が多いし、その時に調子がいい選手が突然勝ったりするなど、実力、実績がそのまま結果に反映しないことも多い競技。ラストチャンスだと思っていたこともあって、うれしかったですね。

ただ五輪本番は雰囲気に圧倒されました。カナダはショートトラックの人気が高く、経験していたワールドカップ(W杯)や全日本選手権などとは比べものにならないほどの大観衆で、浮足立ちそうになったことをよく覚えています。何とかレースでは平常心で走れたのですが、初戦の1500メートルで転倒してしまうなど、結果は残せませんでした(1500メートル=18位、500メートル=14位)。

その後、全日本の監督のつてで競輪選手を目指すことになり、ソルトレーク五輪スピードスケート500メートル8位で、競輪でもトップレーサーの武田豊樹さんの弟子にしてもらいました。自転車経験がほとんどなく、最初は練習がきつくてきつくて…。でも「スケートでやれたのだから」と思って耐えられました。また、スケートをやめる時に残った「まだやり切っていない」というモヤモヤ感を晴らしたいという思いも強かった。もし、スポーツをやってきて不完全燃焼の思いがある人は、競輪選手という道があることも知っておいてほしいと思います。

東京五輪の自転車競技には新田祐大君、脇本雄太君など、G1などでライバルとして戦っている選手が出場します。彼らにはぜひともメダルを取ってほしい。僕は五輪には出たことはあるけど、生で見たことはありません。ぜひとも、長野同様の感動を生で味わってみたいと思っています。(331人目)