2020年東京パラリンピックは国民的スポーツとして金メダルを獲得する。ボッチャが大きな目標を掲げて、普及と強化の一体化に力を入れている。3月18日には東京・赤羽体育館で健常者チームを招待したボッチャ東京カップを初開催。昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックで銀メダルを獲得した日本代表チームが圧勝し、競技の魅力、奥深さをアピールした。来年からは全国キャラバンもスタート。銀メダルで高まった認知度を、さらに全国に浸透させる。【取材・構成=首藤正徳】

●健常者チームもまるで歯が立たない

 日本代表チームの強さは、想像をはるかに超えていた。全12チームが参加したボッチャ東京カップ。電動車いすに乗った銀メダリストたちに、健常者はまるで歯が立たなかった。予選リーグから4試合で日本代表の失点は決勝戦の1点のみ。合計40点を量産した。標的の白いボールにピタリと寄せ、正確に敵のボールをはじき飛ばす。緻密な戦略と神業に、会場は何度も歓声に沸いた。

 重い障害を抱えた人たちの特別なスポーツという一般が抱くイメージを、健常者チームと対戦することで払拭(ふっしょく)した。日本代表の広瀬は「この大会を通してボッチャの楽しさ、奥深さを知ってもらえれば」と満足げ。杉村は「ボッチャはパラ競技だけど誰でもできるスポーツ。それを形にできた。20年に向けて障がい者と健常者がお互い理解し合えれば」と話した。

 日本ボッチャ協会では20年大会の目標を単に「金メダル」ではなく「国民的スポーツとしての金メダル」としている。リオの銀でボッチャの知名度は上がったが、競技の面白さや奥深さを理解している人は少ない。日本協会の村上光輝強化指導部長は「『メダル取ってすごいですね』と言われますが、選手のどこがすごいのかは知られていない」と話す。東京カップは競技の魅力を直接見て、知ってもらう最高の舞台でもあった。

 現在、日本協会の選手登録数は200人ほど。08年北京大会からトップの主力メンバーは変わっていない。普及活動は選手発掘とも直結する。村上部長は「来年から選手が全国を回る全国キャラバンも始めます」。昨夏に始まった特別支援学校等の全国大会「ボッチャ甲子園」は今夏、昨年の2倍以上の40校が参加して第2回を開催する。

 日本協会では20年大会までに健常者も含めて、1万人の登録会員を目指している。一方で健常者と障害者の垣根が取り払われた普及は、選手強化にもつながる。「僕らには想像もできない健常者の発想は参考になるし、健常者が強くなれば、僕らが頑張る原動力にもなる」と杉村。普及と強化の一体化した取り組みが奏功すれば、ボッチャは日本の社会を変える重要なツールになる。

 ◆ボッチャ 重度障がい者の競技スポーツ参加のため欧州で考案された。重度の脳性まひ者および筋ジストロフィーなどの四肢・体幹に重度の障害を抱え、主に電動車いすを利用している人が対象のスポーツ。ルールはジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、赤、青のそれぞれ6球のカラーボールを投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに多く近づけるかを競う。6×12・5メートルのコートで行われ、1対1の個人戦、2対2のペア戦、3対3の団体戦がある。パラリンピックの正式種目で日本は08年北京大会から出場。16年リオ大会では広瀬隆喜、杉村英孝、藤井友里子、木谷隆行で臨んだ団体戦で銀メダルを獲得した。

 ◆ボッチャの17年国内大会予定 11月11、12日に日本選手権を大阪府民共済SUPERアリーナで開催する。個人戦で争う強化指定選手選考大会でもある。同18、19日にはジャパンパラ大会を東京・武蔵野総合体育館で初開催。海外の強豪国を招待しての団体戦になる。