男子1500メートル(車いすT52)で、佐藤友祈(ともき、27=WORLD-AC)が今大会日本勢初の金メダルを獲得した。昨年のリオで屈した世界王者レイモンド・マーティン(米国)と激しく競り合い、残り400メートルからのロングスパートで突き放して3分45秒89の大会新で雪辱した。

 ゴール直後に右拳を握りしめ、日の丸をまとったビクトリーランで世界一をアピールした佐藤が、フッと息を吐き出して言った。「彼に勝つことだけを考えて練習してきた。よかったです」。リオでは400、1500メートルで銀メダル。両レースで佐藤を制したのがマーティンだった。競り合いと駆け引き、ゴール前勝負で届かずに敗れる悔しさを味わった。

 この日も激しく競り合った。スタートで飛び出したマーティンを追う。300メートルで捉えて前に出た。「リオでは600~700メートルかかった。今日は狙い通りだった」。中盤にペースのアップダウンで揺さぶられて後ろに下がったが、ここでも慌てない。体力的にも余裕があった。自分のペースを守りながら再び先頭に出ると、ゴール前勝負を避ける残り400メートルからのスパートで突き放した。

 リオ後も休むことなく練習を積んできた。冬場は長距離の走り込みで持ち味の持久力を磨き、課題のスタートダッシュとスプリントを向上させるために専門外の100メートルのレースにも挑んできた。6月の日本選手権では100、400、800、1500メートルの4冠。今月2日の関東選手権では、単独走の1500メートルで自らの記録を5秒近く更新する3分35秒58の日本新をマークした。「99%勝てると思う」。万全の調整でロンドンに乗り込んでいた。

 21歳の時、脊髄炎で左腕がまひし、下半身の感覚を失った。「車いすでも風を切って走れるんだ…」。5年前のロンドンパラリンピックをテレビで観戦したことで競技を始めた。そのロンドンで世界大会金メダル13個の王者を破った。前回13年の世界選手権では400メートルで金メダルを獲得したが、マーティンは欠場していた。その400メートルは18日に予選、決勝が行われる。「チャレンジャーの気持ちで臨みたい」。佐藤は静かに決意を語った。