女子400メートル(脳性まひT38)で、初出場の高松佑圭(24=堺ファインズ)が1分8秒32の日本新で2位に入り、銀メダルを獲得した。リオ・パラリンピックでは7位に終わって世界の壁を思い知らされたが、1年足らずで世界の表彰台に上がった。

 すべてを出し尽くした。高松はゴール後、トラックに崩れ落ちるように倒れ込み、大の字になった。「最後は死ぬ気で走りました。泣きそうです。表現できないくらい、メチャクチャうれしいです」。日の丸を肩にかけて呼吸が整っても、テンションは高いままだった。

 リオの金メダリスト、コックス(英国)が独走した。高松は前回15年大会銅メダリストのブレーク(オーストラリア)と競り合った。好スタートでリードもバックストレートで前に出られた。残り200メートルから力を振り絞り、コーナーで抜き返すとそのまま逃げ切った。「スタートがうまくいって、落ち着いて自分らしい走りができました。自己ベスト? 本当ですか?」。今年3月にマークした1分8秒60の日本記録を更新したことにも気づいていなかった。

 脳性まひによる左手指の軽度の障害と中度の知的障害がある。地元大阪の特別養護老人ホームで働き、業後にクラブチームの堺ファインズで練習している。世界に飛び出したのは15年。チームメートに勧められて知的障害から身体障害にクラス変更したことで、タイムは一気に世界ランク入りし、国際大会も経験できるようになった。

 実質的な世界デビューは昨年のリオ。7位入賞とはいえ最下位で、100メートルでも予選落ちした。悔しさから練習は質・量ともにボリュームアップ。冬場に例年以上の走り込みと筋力トレを積んで今季を迎え、春先から好調を維持してきた。今大会の200メートルでも29秒56の日本新で6位。この日のレースではリオから3秒以上タイムを縮めた。

 予選なしの決勝レースのみで出場は4人。T38の400メートルは競技者が少ないことから20年東京で実施されるかどうか微妙な状況とされている。それでも高松は笑顔で言った。「自分は頑張って記録を伸ばしていくだけ。それしかできませんから」。22日(日本時間23日未明)には100メートルに出場する。

 ◆高松佑圭(たかまつ・ゆか)1993年(平5)5月31日、大阪市住之江区生まれ。同市立住ノ江中で陸上競技を始める。難波特別支援学校卒。特別養護老人ホームの浜木綿苑に介護助手として勤務している。163センチ、50キロ。