女子400メートル(切断などT47)で昨年のリオ・パラリンピック、今年7月のロンドン世界選手権で銅メダルを獲得した辻沙絵(22=日体大大学院)が、一時は陸上競技からの“引退”を考えていたことを明らかにした。

 この日は200メートルに出場し、自らの大会記録を更新する27秒28をマークした。

 辻は打ち明けた。レース後、報道陣に囲まれると「陸上を本格的に初めて2年。タイムが上がってこないこともあって、やめたいと思っていました」。世界選手権から帰国後、2週間ほど休養した時だったという。リオ、ロンドンで結果は出たもののタイムは伸びない。並行してパラ陸上界のアイドルとしてメディアやイベントに登場する機会も急増した。「いろいろな人と出会って、いろいろなお仕事をいただいた。でも、まったく知らない世界に入り込んで、自分をコントロールできていなかったんです」。

 前日23日の400メートルもエントリーしながらキャンセルしている。「短い距離は走っていましたが、400の練習はしていなかった。ギリギリまで悩みましたが…」。ただ、200メートルを走ったのは、深い迷いから抜け出せたからでもある。「今季最後のレースで、来年につなげるならば200だと思いました」。

 来季は100、200メートルを中心に走ることを決めた。スピードをつけることに専念する。3年後の東京、400メートルで勝負するためだ。「今は冬季(練習)から頑張ろうと思っています」。辻は最後に、しっかり前を向いて言った。【小堀泰男】