女子シングルス決勝で世界ランキング2位の上地結衣(24=エイベックス)が、同21位の朱珍珍(29=中国)を6-3、6-4で破り、金メダルを獲得した。同競技の男女シングルス優勝者に与えられる東京パラリンピックの出場権も手にして、オリンピック(五輪)も含めて個人資格では20年東京大会の日本代表第1号になった。続く男子決勝は世界1位の国枝慎吾(34=ユニクロ)が、同9位の真田卓(33=凸版印刷)との日本人対決を6-2、6-3で制し、日本代表第2号となった。

金メダルと東京パラリンピック出場権をかけた大一番にも上地の頭の中は冷静だった。コートエンドが狭いことと高温でボールが普段より高く弾むことを見極めて、高い弾道のボールをエンドラインぎりぎりに打ち続けて主導権を握った。勝利が決まると小さくガッツポーズ。「うれしいけど、全体的にプレーの精度が高くなかった」と、歓喜に浸る気持ちにはなれなかった。

あくまで最終目標は20年東京大会の金メダル。今は進化の過程ととらえている。昨年は4大大会で3冠を達成した。それでも「同じことをしていては勝ち続けることはできない」と、同7月に車いすの座面を高くして、タイヤのサイズも変えた。より速く、広くコートを動き回り、高いボールに対応するためだ。新たなウイニングショットとしてドライブボレーの強化にも取り組んでいる。

開会式で日本選手団の旗手を務め、金メダルを期待されて臨んだ16年リオデジャネイロ大会は、銅メダルに終わり涙を流した。夢が近づいて心を乱し、焦って攻め急ぐ自分がいた。その苦い経験の分だけ、心も強くなった。「東京大会の出場権を昨日までは意識していたけど、今日は集中できました」。

20年大会まで1年10カ月ある。「これで落ち着いて準備ができる」とホッとはしたものの、一息つくつもりはない。「準備することがたくさんあり過ぎて…。日本にも新しい選手が出てきている。ライバルの(世界ランク1位)デフロート(オランダ)にもパワーで押されているので、2年間でしっかり準備しないと」。夢舞台への切符をつかんでなお気を引き締めた。