ボッチャの急成長16歳コンビが日本代表としてデビューした。内田峻介(山口県協会)と宮原陸人(ポルテ多摩)で、今月19、20日に都内で開催されたジャパンパラ競技大会のBC4(運動機能障害)クラスのペアに出場。世界ランク8位のカナダに敗れたが、“火ノ玉ジャパン”のメンバーとして第1歩をしるした。目標はもちろん20年東京パラリンピック。ライバルとして、親友としてお互いを高め合いながら夢実現を目指す。

 

ピリピリの緊張感に包まれていた。内田、宮原に笑顔は見られない。日本代表デビュー大会で初の国際舞台。20日、新宿コズミックセンターでは700人を超える観衆が2人を応援していた。強敵カナダとの第2戦。第1エンドに1点を先制してスタンドを沸かせたが、その後に8点を失って、悔しい逆転負けに終わった。

内田 緊張しました。試合には負けましたが、多くの人の前でプレーできていい経験になりました。

宮原 この舞台に立たせてもらえてうれしい。緊張しましたが、この雰囲気を味わえてよかったです。

ともに02年生まれの16歳、高校1年生。昨年12月の日本選手権に初出場して内田が2位、宮原が3位に入り、今回初めて代表に選出された。日本選手権優勝で代表経験も豊富な江崎駿(17=あいち協会)との10代トリオで大会に臨んだが、その江崎が宮原と組んだ19日の第1戦後に体調を崩し、第2戦は2人で戦うことになった。

ボッチャの広がりがニューパワー出現につながった。16年リオ・パラリンピックBC1・2(脳性まひ)のチーム銀メダル獲得を追い風に、日本協会は20年東京へ普及と強化、人材発掘作戦を推し進めている。健常者を交えた大会や体験会、AKBグループと協力したPRイベントのボッチャキャラバンなどを開催。宮原は中3時に参加した体験会から、内田はスポーツ庁が主導する人材発掘プログラム、J-STARプロジェクト1期生として頭角を現した。

2人とも来年の東京大会出場が大きな夢。BC4は個人とペアが行われ、個人戦には開催国枠を含めて2人まで出場できる。そのためには世界ランキング上位という厳しい条件があり、17年アジアユース金メダルの江崎を中心にした代表争いになる。

宮原 江崎選手はうまいので、それを上回れるようなプレー、厳しい場面でも落ち着いて決めていけるようにしたいです。

内田 自分はメンタルが課題なので、試合にたくさん出て場慣れしていきたい。それにもっとパワーをつけたいです。

昨年10月の合宿で初対面し、今回は代表デビュー大会を一緒に戦った。まだお互いをどう呼び合うかも決まってなく、試合中は「ねえ、ねえ」と声を掛け合いながら戦術を練ったという。ただ、通じ合うものがあったのだろう。

宮原 内田君とは友だちになりたてのホヤホヤですけど、2人で戦いながら強くなりたい。

内田 宮原君は意識しますけど…。ライバルだから戦うときは本気で、あとは仲良しでいたいです。

そんな2人を日本代表の村上光輝監督(44)は温かい目で見守りながら期待を寄せる。「連係もまだまだで技術も粗削りですが、怖いもの知らずで我々が思いもつかないような発想、戦術で戦っていた。経験を積めればもっともっと勝てるようになるでしょう」。

16歳の代表コンビは親友として、ライバルとして、これからどんな成長曲線を描いていくのだろうか。【小堀泰男】

○…ジャパンパラ・ボッチャ大会に“新兵器”が投入された。観戦者のための「ボッチャ・ルーラー」で、客席からは見えにくいボールの配置や試合展開、得点状況を手元のスマホやタブレットで確認できるシステム。会場内に設置したカメラで戦況を把握し、分かりやすく画像化するもので、日本協会と電通が共同で開発を進め、この大会でデビューした。会場ではスマホを片手に声援を送る観客の姿が目立った。

<ボッチャあらかると>

◆競技メモ 重度障がい者のために欧州で考案された。脳性まひ、筋ジストロフィーなどで四肢・体幹に重度の障害を抱え、主に電動車いすを利用している人が対象のスポーツ。白いジャックボール(目標球)に向かって赤と青のボールを1エンドで6球ずつ、投げたり、転がしたり、他のボールにぶつけたりしながら、自分のボールを目標に数多く近づけることで得点を争う。ジャックボールは各エンド交互に投げる。カーリングに似ているが、目標のジャックボールが移動することが最大の違い。コートは6×12・5メートル。男女の区別はなく、BC1から4まで4つのクラスに分かれて個人、2対2のペア、3対3のチームで試合が行われる。障害でボールが投げられなくても補助者に意思を伝えられれば、ランプ(勾配具)を使ってプレーできる。個人・ペアは4エンド制、チームは6エンド制。

◆東京パラリンピック BC1から4までの個人とBC1・2のチーム、BC3、BC4のペアと合計7種目が行われる。日本には全種目に開催国枠1があり、個人戦については世界ランキングの10位以内の条件でもう1人出場できる。

 

■2019ジャパンパラ・ボッチャ競技大会■

19、20日に東京・新宿コズミックセンターで開催された。BC1・2(脳性まひ)チームで16年リオ・パラリンピック、18年世界選手権銀メダルの日本は杉村英孝(36=静岡協会)広瀬隆喜(34=西尾レントオール)藤井友里子(46=富山クラブ)中村拓海(20=愛徳福祉会)のメンバーで世界ランキング7位の韓国に8-1、8-3で連勝。BC4(運動機能障害)のペアはカナダと対戦し、江崎、宮原組が1-9、宮原、内田組が1-8で敗れた。日本選手3人によるBC3(脳性まひ、運動機能障害)個人は、準決勝で有田正行(38=電通アイソバー)を破った高橋和樹(38=フォーバル)が決勝で河本圭亮(19=あいち協会)下し、日本選手権の雪辱を果たした。