三木拓也(29=トヨタ自動車)が2年ぶりに飯塚のコートに帰ってきた。ビンユソフ(マレーシア)に6-1、6-1のストレート勝ち。第1セットにいきなりサービスゲームを落としたが、その後は持ち味の粘り強いストロークで相手を左右に動かして圧勝した。

「復帰して初めてのSS(スーパーシリーズ、グランドスラムに次ぐグレードの大会)で、しかも地元日本でしたから、緊張して固かったですね」。コートにいる間は終始こわばっていた表情が、関係者に初戦突破を祝福されてようやく緩んだ。

世界ランクのベストは14年11月の6位。パラリンピックは12年ロンドン、16年リオ大会に出場し、真田卓とのダブルスでベスト8、4位。シングルスでもリオでベスト8に入っている。日本の車いすテニスでは一時、第一人者の国枝慎吾に次ぐ存在だった。

そんな三木をアクシデントが襲ったのは17年11月のオランダ遠征時。移動用バスの車いす用スロープのシャフトが折れる転落事故に巻き込まれた。骨肉腫の影響で人工関節を置換している左膝を強打し、その影響から仙腸関節炎を起こした。激しい腰痛で寝返りすら打てず、日常生活にも支障が出たという。

練習再開まで半年かかった。18年シーズンは1試合もコートに立てなかった。今年2月からツアーに復帰し、3月にイタリアでシングルス、ダブルスの2冠を果たすなど復調途上にある。「ケガをした時はショックでしたが、オーバーワーク気味で伸び悩んでいた時期でもありました。だから休んだことを前向きに考えています」。現在、体のどこにも痛みはない。さらにステップアップするためサーブ、ストロークも改良中だ。

最新の世界ランクは64位。東京パラリンピックのシングルスへは日本から最大4人の出場が見込まれるが、ライバルは多い。「あと1年ちょっと。もう焦っても仕方ない。次のパリ大会も含めて自分のテニス人生を考えたい」。東京に出られればいい。ただ、間に合わなくても悲観はしない。そんな思いでコートに立つ三木は、24日の2回戦で東京大会出場を決めている国枝と対戦する。【小堀泰男】