世界ランク1位の国枝慎吾(35=ユニクロ)が同11位のトム・エバーリンク(オランダ)を7-5、6-0のストレートで下し、4年ぶり9回目の優勝に王手をかけた。

青空が突然曇って雨が降り、また晴れるという荒れた天気で、冷たい強風が吹きつける。ファーストサーブを慎重に入れにいった国枝だが、フォアの強打を誇るエバーリンクをリズムに乗せてしまった。第1セット第1ゲームでいきなりサービスを落とすなど、2ブレークを許す苦戦。何とか3つのブレークを返してしのいだが、思わずコート上で「しょうがない。こういう日もある…」とつぶやいていた。

切り替えた。第2セットは開き直ってアグレッシブに戦った。力強いファーストサービスで崩して左右に振り回し、ネットに出た。昨年から力を入れてきたプレースタイルも決まって相手を完璧に封じ込んだ。「この風で100%は無理。70点の試合を目指しました。自分のプレーのいいところを出して、守りと攻めのめりはりも出せました」。まるで別の試合を見ているようだった。

4年ぶりの優勝まで、あと1勝。16年は欠場した。右肘痛からの復帰途上だった17年は2回戦、天皇杯が下賜された昨年は決勝で敗れている。「自分が35歳でこの大会も35回目と、同じ歴史を歩んできたと感じる」という思い入れの強い大会は、自らが戦う平成最後の大会にもなる。「期するものがある。いい形で締めくくれればと思う。いいプレーを多くの方に見てほしい」。9回目の栄冠へ28日、長年のライバルでもあるステファン・ウデ(フランス)と相対する。【小堀泰男】