世界ランク1位の国枝慎吾(35=ユニクロ)が、同5位のステファン・ウデ(48=フランス)7-6、7-5のストレートで下し、4年ぶり9回目の優勝を飾った。この大会には昨年から天皇杯、皇后杯が下賜されており、昨年準優勝に終わった国枝は平成最後の大会で念願の天皇杯を獲得した。

思わず両手を高く掲げた。右拳を2度、3度と握り締める。「この天皇杯は1つのタイトルと考えていた。僕ももう35歳。取れずに終わることも頭をよぎったりしましたから」。国枝はジョークを交えて勝利の喜びを表した。激しい打撃戦。第1セットを3-5とリードされて闘志に火がついた。「ストロングショットで(ウデを)走らせることでペースをつかんだ」。6-6と追いついてタイブレークを制し、第2セットもブレーク応酬の接戦をしのぎきった。

今回が57回目の対戦。グランドスラム、パラリンピックでウデとは激戦を繰り広げてきた。「彼との戦いはメンタルタフネスがものをいう。どちらがリスクのあるショットを打てるかどうか」。相手のループボールをフォアに回り込んでベースライン上に、左右に打ち込み、パワーと制球力で勝機を見いだした。バックのドロップショット、鋭いフォアクロス、バックのストレートも効果的でライバルから44個目の白星を奪い取った。

平成後半の男子車いすテニス界は、国枝の時代だった。06年に初めて世界1位になり、翌07年の全豪でグランドスラム初優勝を果たして以来、シングルスでグランドスラム通算22勝。パラリンピックでも2つの金メダルを持っている。16年には右肘を痛め、17年はビッグタイトルとは無縁だったが、その間にバックハンドを改良して右肘の不安を払拭(ふっしょく)し、昨年には全豪、全仏を制して世界1位にカムバックした。それでも「まだまだレベルアップしたいし、気を緩めたらすぐに勢力図は変わってしまう」と向上心も衰えない。

平成最後の大会で存在感を示し、新たな時代へと向かう。まだ勝っていないウィンブルドンへの思いも大きなモチベーションになる。「令和の初期も国枝の時代だった、と言われるよう、もう少し活躍させてください」。控えめな言葉に逆に強い決意がのぞく。今年の全豪は準決勝で敗れたが、それ以降無敗で4大会連続優勝。強くなり続ける国枝は、勝って、世界1位を守り続けて、来年の東京パラリンピックへ向かう。【小堀泰男】