男子100メートル(義足T64)で井谷俊介(24=SMBC日興証券)が11秒68の大会新で優勝した。スタートの出遅れが響いてスピードに乗り切れず、先行した池田樹生(22=DAC)をかわしてゴールしたものの自己ベスト、11秒55のアジア記録更新はならなかった。

レース後すぐに「井谷反省会」が始まった。指導を受ける仲田健トレーナー(50)と額を突き合わせる。スマホで撮影した映像を見ながら、井谷は何度もうなずいていた。会見では「タイムに意識がいってしまって失敗してしまいました」と、反省の言葉が口をついた。

6日の200メートルでライバル佐藤圭太(27=トヨタ自動車)のアジア記録を塗り替え、タイムへの欲求が高まっていた。細かい雨が落ちていたが、追い風1・5メートルの好条件。「狙える」と思ったことが落とし穴になった。スタートからの加速が不足して中盤で伸びず、最後は脚が流れた。「自分のレースをすることに集中しないと。記録はあとからついてくるんだから」と仲田トレーナーも愛弟子の空回りを指摘した。

「こんなミスをしていたら世界とは戦えない。ジャパラではしっかり自分の走りをしたい」。次のレースは20、21日のジャパンパラ大会(岐阜)。ここで自己ベストをたたき出して11月のドバイ世界選手権へスピードに乗りたい。11秒台前半の記録で表彰台に立つという目標を果たすために。【小堀泰男】