パラ陸上界の超新星・井谷俊介(24=SMBC日興証券)が“アジア新”をマークした。

20年東京パラリンピック開幕まで1年となった25日、東京・代々木公園陸上競技場(織田フィールド)などでカウントダウンイベントが行われ、井谷はワールドアスリートチャレンジ100メートルスプリントで自らのアジア記録11秒55を上回る11秒45。風向きと風速は表示されず、手動計時であくまで参考記録だが、26日に出発するパリGP(28~30日)へ絶好のデモンストレーションになった。

井谷(義足T63)はリオ・パラリンピック金メダリストのダービット・べーレ(ドイツ、義足T62)、吉田知樹(日体大1年、義足T63)と走ってトップでゴールした。会場は前回1964年の東京パラリンピックメイン会場。「歴史を感じます。僕はまだパラリンピックに出たことはないですが、来年の東京で僕の走りを見た障がいを持つ子どもたちが陸上をやって見たいと思うような選手になりたい」。井谷はほおを流れ落ちる汗を拭った。

一昨年11月に本格的に陸上を始めた。昨年10月のジャカルタ・アジアパラでは予選で11秒70のアジア新を出し、勢いに乗って優勝。今年5月の静岡国際ではその記録を0秒15上回る11秒55で走った。この夏は1年後の東京を目指して徹底的に下半身の筋力を強化。疲労が残り、十分な体調ではなかったが、多くの観衆が注目する中での快走だった。

パリGPではアジア記録の更新を狙い、11月の世界選手権(ドバイ)では11秒10を目標にしている。初出場の世界選手権で4位以内に入れば東京出場が内定するが「表彰台、メダルを取りたい」。走り始めて1年8カ月。200メートルのベスト23秒80もアジア記録だ。大学2年の時に交通事故で右膝下を切断しながらパラリンピックのメダルとカーレーサーという2つの夢を追う異色のスプリンターは、この1年でさらにスピードを上げていく。