女子SU5(上肢障がい)で鈴木亜弥子(32=七十七銀行)が大会3連覇を達成した。楊秋霞(中国)に2-0(21-19、22-20)のストレートで快勝。17年の世界選手権決勝で勝って以来、5連敗中だったライバルを2年ぶりに倒して、世界ランキング、東京パラリンピック出場ランキングでともに1位をキープするベテランが進化を見せた。

激しい打ち合いだった。打っては守り、しのいでは攻める。第2ゲーム、20-20。お互いがすべてのショットを出し尽くした攻防で、鈴木がカットショットをネットすれすれに落とす。楊の返球はネットにかかった。21本のラリーがこの試合の象徴だった。マッチポイントを握った鈴木のサーブを楊がリターンミスし、決着がついた。

「第2ゲームの18点目以降からショットがさらによくなったと思います。ファイナル(ゲーム)にはいきたくなかったですからね」。第1ゲームは先行し、追い上げられたが逃げ切った。第2ゲームは序盤に4点のリードを許しながら追いつき、突き放されても終盤の連続得点でひっくり返した。

09年の世界選手権、10年のアジアパラを制して引退した。しかし、バドミントンが東京パラリンピックの新競技になったことで16年にカムバック。以来、出場した大会では楊にしか負けていない。世界選手権では17年の決勝で勝ったが、今年8月には連覇を阻まれている。この日まで5連敗中で通算2勝7敗と大きく負け越していた。

「楊さんのプレーを参考にしました」。ステップを広くしたフットワークでコートカバーリングを向上させ、走り込みを増やしたことでショットの威力も増した。クリアショットで楊をコート奥に押し込み、ネット際にカットショットを落とし込む。これまで苦い思いをさせられてきたライバルのスタイルを身にまとい、今春には「ボロボロにやられていた」試合内容を改善した。

「この会場で勝てたことは自信になります。応援もありがたかったです」。東京パラのプレイベント、本番会場の代々木第1で最強ライバルから白星をもぎ取った。「東京で金メダルを取る。私は世界一になるためにプレーしていますから」。目標へ確実に前進していることを印象づけるように、鈴木がコートで力強く、しなやかに舞った。【小堀泰男】