BC1(脳性まひ)では、これまで5度準優勝の中村拓海(21=愛徳福祉会)が、10度目の優勝を目指した藤井友里子(47=アイザック)を4-1で倒して悲願の初優勝を果たし、東京パラリンピック代表に内定した。

言葉が詰まった。試合直後のインタビュー。「昨年から1年間、ダメだったことを、修正してきた。これまで、シルバーコレクターと言われてきましたが、やっとゴールドが取れました」。

BC1のホープと言われ、国際大会でも実績を重ねて世界ランキングも日本選手トップの7位に上昇している。それでも日本選手権は勝てなかった。5度の決勝敗退のうち4度が藤井相手だったが、ついに高かった壁を乗り越えた。

今夏から車いすの右側、膝の横に100円ショップで買った伸縮する指示棒を取り付けた。試合中に伸ばして投球方向を定め、その棒に沿うように右腕を振る。技術や戦術だけでなく、精度アップへ手づくりの工夫も成長につながっている。

東京パラ代表にも内定した。「リオのときは選考会で負けて出場できなかった。だからどうしても東京に出たかった。力を出し切りたい」。白縁のメガネがトレードマーク。その奥の両目を赤くしながら、中村は力強く言った。

◆中村拓海(なかむら・たくみ)1998年(平10)7月6日、大阪府羽曳野市生まれ。リハビリで通っていた病院で紹介され、小学6年でボッチャを始める。18年世界選手権で個人5位、団体戦チームBC1-2銀メダル。世界ランキング7位。愛徳福祉会所属。