男子72キロ級で2度の優勝経験がある樋口健太郎(48=フリー)は170キロで2位だった。80キロ級から階級を落としてきた宇城元(48=順大職員)に、目の前で自らが持っていた日本記録を1キロ上回る176キロを挙げられたが、満足そうな笑みを浮かべてメディアの質問に応じた。

「日本記録にはこだわっていません。パラリンピックに出場することしか考えていませんから。宇城さんが出ようが出まいが関係ない。絶好調ですよ。今日はこの重さでいこうと(大会前から)思っていました」

160キロ、165キロ、170キロをきれいに3本成功させた。宇城が2回目に171キロを挙げてもわれ関せず。3回目の重量も変更しなかった。全日本で2年ぶり3度目の優勝を飾るよりも、東京パラに出場するための調整を優先した。

昨春に日体大大学院に入学し、現在は義足の研究に取り組んでいる。陸上部に入部し、砲丸投げを専門種目にトレーニングにも励んでいる。「これからも陸上に限らず、それ以外のいろいろな競技でパラリンピックに出場できればと思っています」

樋口のチャレンジの第1弾がパワーリフティングでの東京パラ出場になる。「6月のドバイのW杯で190キロを挙げたい。そのために今日、170キロをしっかり挙げることができた」。東京パラランキングは175キロで12位。190キロに成功すれば現状、出場圏の8位以内に浮上できる。パラ2大会出場の宇城の存在も関係ない。樋口はわが道を行く。【小堀泰男】

◆パラ・パワーリフティング 下肢障がい、低身長の選手が対象で、台上にあおむけになった状態でバーベルを押し上げて重量を競うベンチプレス競技。東京パラでは男女各10階級が行われる。出場標準記録突破、国際パラリンピック委員会指定の国際大会出場、東京パラランキング8位以内の条件を満たした男女160人に加え、推薦選手20人の計180人が出場予定。