東京パラリンピック陸上男子100メートル、400メートル、1500メートル(車いすT52)代表の伊藤智也(57=バイエル薬品)は11日、夏の大舞台に関する葛藤を激白した。

「大会の可否とかワクチンを接種できることについて、賛否両論ありすぎて、どう答えていいのか正直、頭の中で整理がつきません。個人のコメントは差し控えさせていただきます」

パラリンピックには04年アテネ、08年北京、12年ロンドンと過去3大会に出場し、金メダルも獲得している。他にはない独特の大会とよく分かっている。だからこそ、こうも述べた。

「オリンピック・パラリンピックは、地球サイズのイベントですので、日本国民が示すのが、イエスであっても、ノーであっても、その答えが地球サイズの、人類の代表する答えであって欲しいと思いますね」

34歳の時に多発性硬化症を発症。コロナ禍では体調管理に最大限、気を使っている。この日の遠征スケジュールが、それを物語る。

会社とも相談し、宿泊、公共交通機関の使用は控えた。拠点の三重からは車。「昨晩の朝3時に家を出て、(レースの)3時間ほど前に付いた」という。レース後は、すぐに三重に戻る。まさに弾丸遠征となる。「1500メートルをやりますので、持久系もそのあたりから鍛えていこうかな」と笑い飛ばした。

この日は400メートルで57秒88。世界記録を持つ佐藤友祈(31=モリサワ)に0秒24差で続く2位。国立競技場のトラックは「下からの反発がこない。力が吸収されていく」との印象を持った。今後は、その走った感触が似た競技場で練習をしていく意向。「競技場の性質は分かった。どのような走りが一番タイムがいいのか徹底的に洗い出していきたい」と話した。