女子で世界ランク6位のLS北見の日本が、14年ソチ・オリンピック(五輪)銀メダルのスウェーデンから劇的勝利を挙げた。スキップ藤沢五月(26)を軸に粘り強く戦い、第9エンド(E)で2点差を追いつき、最終10エンドに相手が最後のショットでミス。1点が入って5-4で勝った。五輪でスウェーデンに勝つのは初めてで日本勢最多の5勝目。今日20日の英国戦に勝てば、他国の状況次第で初の4強進出が決定する。
氷に顔を近づけて、必死でブラシを掃いた。同点の最終10E、相手のラストストーン。藤沢は「やるべきことはやりきった。これで決まればしょうがない」。自軍の石をはじいた敵軍の石がするすると動く。藤沢は少しでも石を動かそうと、両腕を4秒間で16往復させた。わずか5センチ。もう1個あった自軍の石よりも円心から離れた。相手の選手がスティックをたたきつける横で、4人は何度も抱き合った。
藤沢 正直、負けたと思った。本当に僅差。最後まであきらめずに戦えた。
午前の試合で世界ランク1位カナダに敗戦。悔しさで目を赤くしたサード吉田知は、11時間後に喜びの涙を浮かべた。「これが本当にカーリングだな」。チームのショット成功率は相手の80%に劣る72%。2度のスチール(有利な後攻での失点)も食らった。あきらめない姿勢が、最後の最後で運と1点を運んできた。
藤沢にとって、父充昌さん(58)の夢も背負った舞台だ。父は98年長野五輪で日本代表の最終候補10人に入ったが、メンバーに残れなかった。娘は5歳から競技を始めて、ジュニアまで父がコーチ。「楽しさを教えてくれた」と感謝する。中学生時代に混合ダブルスを組んで「けんかして、もう組まなくなった。どっちも自分がうまいと思っていて、作戦を譲り合えなくて」と笑う。ジュニア世界選手権出場を機に、父は「もうおれに教えられるものはない」とコーチから身を引いたが、今でもネット動画を見て、作戦を語り合う。「もうとっくに私を超えていますよ」と目を細める父が観戦に訪れた試合で、最高の勝利を手に入れた。
今日20日の英国戦に勝てば、4強入りの可能性が出てくる。世界ランク4位の英国は、3大会連続出場のミュアヘッドが率いている。
10年バンクーバー五輪で勝利した本橋は「いい選手でいいメンタルを持っている。過去の五輪よりもチームが成熟している」と警戒した。吉田知は「5勝、6勝を目標に来ているわけじゃない。最高のパフォーマンスを皆にみてもらう。それが目標です」。五輪初出場のLS北見が、新しい扉を開く。【益田一弘】