フィギュアスケート男子で銀メダルを獲得した宇野昌磨(20=トヨタ自動車)が“爆笑トーク”で大物ぶりを発揮した。18日は羽生とともに一夜明け会見に臨み、自分を飾らない発言を連発。オリンピック(五輪)メダリストで急上昇の注目度を物ともせず、19分15秒の会見を自然な姿で盛り上げた。次の大舞台となる世界選手権(3月21日開幕、イタリア・ミラノ)に向け、わが道を進むスタイルは変わらない。

 壇上で首を揺らし、目をつぶりかける宇野に、世間が想像するメダリストの雰囲気はなかった。前日17日に成し遂げた羽生とのワンツーフィニッシュを経て、海外メディアも多く駆けつけた記者会見。胸に銀メダルをかけながら「日本に帰ったら、そのメダルを誰にかけてあげたい?」という質問にキッパリと答えた。

 「『かけたい人がいればかければいいかな』って思います」

 キョトンとした表情と言葉のギャップに場内がどっと沸き、さらに続けた。

 「別に(メダルを)特に大事に扱おうと思ってはいないので『触りたい人がいれば触ってください』という感じ。保存方法も家族に渡して、お任せします」

 五輪への冒涜(ぼうとく)ではなく、いつもの姿をそのまま見せた。今季は何度も「五輪でのメダルに向けて…」と聞かれたが「『五輪だから』ではなく、どんな試合でも練習してきたことを出し切りたい」と答えてきた。前日17日のフリー後も「最後まで1つの試合でした」と大会の大小で線引きせず、自分のベストを求める。メダリストになっても、五輪を特別視する気がない。その自然な考えが聴衆の耳をくすぐった。

 「弟とは全く連絡を取っていなくて、会ったとしても何も言われないと思います。家族からもまだ連絡はありません。僕が連絡を返さないので、連絡が来ないんだと思います(笑い)。友達からはたくさん『おめでとう』と言葉をいただきましたが、なるべく手短に返させていただきました」

 テレビ出演などで睡眠時間は約4時間。それでも25日のエキシビション前に一時帰国し、世界選手権へ再始動する。そのパワーの源は金メダルの羽生や、銅メダルのフェルナンデス(スペイン)から得た刺激だ。

 「(2人と比べ)ジャンプの完成度の高さが、僕には一番足りていない。大切なところかなと思います」

 この男に「余韻」という言葉はない。【松本航】