日本代表の「スマイルジャパン」が3度目の五輪で初勝利を挙げた。1次リーグB組最終戦で韓国と北朝鮮の合同チーム「コリア」を4-1で下し、同組3位が確定。第1ピリオド(P)1分7秒にエースFW久保英恵(35=西武)が先制点を挙げるなど4得点で、北朝鮮の「美女軍団」も駆けつけた大アウェーの会場に足跡を刻んだ。次戦は18日の5~8位決定予備戦となる。

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 世界ランク9位のスマイルジャパンが、過酷な敵地で耐え忍んだ。白の統一旗が振られ、北朝鮮の応援団を中心に叫ばれる「イギョラ(勝て)! コリア!」の声。韓国の同ランクは22位と格下だが、山中監督は「そんなにチャンスじゃなくても盛り上がる。やりにくかった」と生みの苦しみを感じていた。

 その空気感を苦労人が打ち破った。試合開始1分7秒、相手ゴール裏に回ったFW床秦の折り返しを、FW久保が確実に打ち込んで先制点。第2P中盤に1点を返され、スタンドの床がギシギシと揺れるほど場内が沸いたが、第3PにDF小池が追加点を奪い「流れを変えたいと思っていた」と主導権をたぐり寄せた。

 初出場した98年長野五輪から20年は、苦難の道のりだった。久保は04年のトリノ五輪予選敗退を機に、翌05年に強豪カナダへと渡った。知り合いの力でホームステイ先を確保し、無収入で貯金を切り崩す生活。本場の空気を吸ったことで、後に多くの後輩が続いた。

 1シーズンを過ごして帰国後は、東京のリンクでアルバイトをしながら競技を続けた。合宿が増えると仕事に行けず、給料が2万円の月もあった。10年3月に引退後、11年夏に現役復帰した理由も「私が戻ったことで、周りの選手が危機感を覚えてくれればいい」という代表への思いだった。

 4年前は5戦全敗。今大会も2連敗でメダルが消えた。だからこそ、2大会連続主将のFW大沢は「日本アイスホッケー界に意味はあるけれど、ここでの初勝利がすごく悔しい」。指揮官も「次の勝利が一番大事。(敗れて)7位か8位じゃ、ソチから(の成長を)何も評価してもらえない」と力を込める。歴史的1勝は通過点だ。【松本航】