五輪1勝は次代へのステップ-。アイスホッケー女子日本代表スマイルジャパンが平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)1次リーグで韓国・北朝鮮合同チーム「コリア」を4-1で下し、3大会13戦目で初勝利を挙げた。代表チームの前主将でソチオリンピック(五輪)では副主将を務めた平野由佳さん(31)は、昨夏まで大沢ちほ主将(26)と道路建設ペリグリンでプレー。公私ともに親交のある後輩を祝福し、残る順位決定戦へ、エールを送った。

 自分のことのようにうれしかった。歴史的1勝。平野さんは東京都内の勤務先で、スマイルジャパン勝利を知った。「相手どうこうより、1勝することが大事。5位に入る可能性があるので、まだまだ頑張ってほしい。4年間やってきたことをすべて出し、悔いが残らないように」。初白星は、まだ通過点にすぎない。18日からの順位決定戦に向けて、前主将らしい言葉だった。

 13年のソチ五輪最終予選前のこと。選手による新主将を決める投票が行われ、平野さんの後を継いだのが、当時20歳の大沢だった。副主将としてサポートする立場に変わった平野さんは、すぐに「ちほなら任せられる。大丈夫」と背中を押した。この一言が、新主将を奮い立たせた。

 大沢の性格を尊重した平野さん流の“主将育成術”が、若い主将を不動のリーダーへと変えていった。「自分から話すようには見えないけど、人一倍努力する選手だし空気が読める。だから背中で引っ張れる。適任と思った」。平野さんはチーム内で話し合いがあると、できる限り大沢の意見を求めるように心がけた。「年上の人に若い私が意見してもいいのかな」(大沢)と迷っていた時期に、当時27歳と年長の平野さんの“アシスト”が、転機となった。

 マイペース肌の大沢にとって、積極的に話しかける平野さんは、理想の主将像。今でも「由佳さんみたいに周りを見て意見を聞いてというのを考えながらやってきた」と話す。年下の意見を吸い上げ年長者に伝え、チームの一体感を醸成する。受け継がれた平野イズムは、地元コリアの大声援をはねのける「土台」となった。

 昨年末、苫小牧の大沢の実家で食事をともにした。「私は4年間の努力を見ている。あとはやるだけだよ。楽しんできて」と声をかけて送り出した。5戦全敗で終わった4年前の悔しさを晴らしてくれた戦友たちを、心から誇りに思っている。【永野高輔】