スポーツ仲裁裁判所(CAS)の反ドーピング部門は13日、スピードスケート・ショートトラック男子で平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)代表の斎藤慧(21=神奈川大)が競技会以外のドーピング検査で、利尿作用のある禁止物質「アセタゾラミド」に陽性反応を示し、暫定で今大会初の資格停止にしたと発表した。

 大会後に最終的な裁定結果が出される方針だが、確定すれば冬季オリンピック(五輪)の日本勢では史上初。斎藤は選手団を通じて「この薬を使用するメリットも動機もありません。偶発的に起きた出来事により無自覚のまま口に入ってしまったとしか考えられません」とコメントした上で「今、それ(潔白を証明するための戦い)を要求することはチームのみんなに迷惑をかけると思った」と処分を受け入れ、12日に選手村を退去した。

 平昌での日本選手団の記者会見によると、斎藤は4日に選手村で検査を受け、最初の分析に使うA検体に陽性反応が出たことが国際オリンピック委員会(IOC)から7日に報告された。その後、予備のB検体の検査結果も変わらず。1月29日に受けた検査では、禁止物質は検出されなかったという。

 江陵の練習場で午後に調整した斎藤の姉で女子代表の仁美(27=オーエンス)は無言を貫き、ギルメット・ヘッドコーチは夜のレースに向けて「集中しているので、特に選手たちに影響はないと感じています」と説明。初出場の斎藤はリレーの補欠の立場で、今大会は出番がなかった。

 ◆斎藤慧(さいとう・けい)1996年(平8)2月20日、神奈川県生まれ。13、14年の世界ジュニア選手権で3000メートルリレー3位。神奈川・光明学園相模原高出、神奈川大。姉の仁美もショートトラック代表。161センチ、55キロ。

 ◆アセタゾラミド 緑内障、てんかん、肺気腫などの治療に用いられる。日本オリンピック委員会によると国内では薬局などで購入可能な一般用医薬品ではなく、処方箋が必須な医療用医薬品として販売されている。世界反ドーピング機関(WADA)が定める利尿作用のある禁止物質で、スポーツでは筋肉増強剤などの使用を隠す場合などに使われることもある。