オリンピック(五輪)単独最多8度目の出場の葛西紀明(45=土屋ホーム)が、再び大記録に挑戦する。予選は122・5メートル、104・2点の22位で通過。前回大会で銀メダルを獲得した得意の個人ラージヒルでメダル獲得を目指す。表彰台に立てば、個人種目で冬季五輪最年長メダリストとなり、記録男に新たな勲章が加わる。小林陵侑(21)は3位、竹内択(30)は27位、小林潤志郎(26)は37位で通過した。

 怒りに震えていた。葛西はジャンプを振り返り「ゴミ」と悔しさをあらわにした。強い向かい風を受けたが、空中で失速し、122・5メートルに落下し22位。予選を通過したとはいえ「(予選前の試技で)内容がよくなくて消極的になった。自分に腹が立つ」と珍しくいら立った。

 ラストチャンスで大記録に挑戦する。個人戦はラージヒルで最後。今日17日の本戦は45歳256日で迎える。メダル獲得なら1908年ロンドン五輪スペシャル・フィギュアで銅メダルを獲得したジェフリー・ホールセイ(英国)の44歳176日を抜き、個人種目で冬季五輪最年長メダリストになる。ギネス記録を5つ持つ「記録男」だが、大記録がかかればかかるほど、強さを発揮する。後輩の小林陵が3位で予選を通過したことに対し、報道陣から「負けられないですね」と問われると「オイ」と気合を入れ、負けん気が沸々と湧き上がっていた。

 前回大会で銀メダルを獲得した得意の種目。10日の個人ノーマルヒルこそ21位だったが、ジャンプ台が大きくなればなるほど存在感が出てくる。強い風が不規則に吹くジャンプ台で、欧州のファンが名付けた呼び名「神風」が吹けば飛距離は伸びる。「ここまで来たらあれこれ考えてもしょうがない。風当たりが悪いので次は当たる」と言い切った。

 心強い援軍が来る。この日、姉紀子さんが韓国入りし、当日には妻怜奈さん、愛娘璃乃ちゃんが駆けつける予定だ。「家族の前でメダルを取りたい」。レジェンドが再び夢に挑戦する。【松末守司】

 ◆冬季五輪の年長メダリスト 個人種目では1908年ロンドン大会男子フィギュアで銅メダルを獲得したジェフリー・ホールセイ(英国)の44歳176日が最年長。当時は夏季大会でフィギュアスケートを実施していたが、氷上にエッジで図形を描くスペシャルフィギュアという種目で出場選手は3人だけだった。チームでは、24年シャモニー・モンブラン大会のカーリング男子で銀メダルのカール・クロンルント(スウェーデン)で58歳157日。