前人未到の領域に到達した。14年ソチ五輪男子ハーフパイプ銀メダリストで平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)代表の平野歩夢(19=木下グループ)が国際主要大会では史上初となる2連続での4回転技を決めた。3回目の演技で99・00点(100点満点)をマーク。五輪の前哨戦ともいわれる世界最高峰のプロ大会で、16年オスロ大会以来となる2度目の頂点に立った。初出場で同代表の片山来夢(22=バートン)は81・66点の6位だった。

 もはや人間業とは思えない。平野が史上初の偉業を成し遂げた。出場10人が3回の演技で最高得点を競う方式の大会。その3回目だった。2つ目のジャンプで、右足前の正スタンスから軸をずらし、縦2回転、横4回転する大技「フロントダブルコーク1440(DC14)」に成功。着地は鍛えてきた腹筋とボディーバランスで乱れない。勢いを維持したまま夜空に舞うと、左足前の逆スタンスから入る同回転の「キャブDC14」も決めた。連続4回転の成功は主要大会では世界初。「クリーンにできて、初めて大会でも決められたのが一番」と喜んだ。

 決まれば2週間後の平昌五輪でも、金メダルが現実的となる最強のルーティンが完成した。連続4回転後も、3回転半する高難度の技が並んだ。控えめに左手を上げてフィニッシュし、99・00の得点が表示されると、ボードを持ち上げ、歓声に応えた。「狙ってこれをやろうと思ってこっちに来ていた」。トップだった2回目の96・66点から、手を緩めず、点数を伸ばした。

 連続4回転は12月のW杯でも試していたが、いずれも転倒。近年、取り組んできた課題だった。大会はともに優勝しているが、平野は満足していなかった。大会前は「人ができない構成を組み立てられれば、金の可能性も高まる。そこを目指してやりたい」と話していた。五輪2度の金メダルで、今月13日のW杯で100点満点と圧倒的な演技を見せたショーン・ホワイト(米国)は今大会不在だった。とはいえ優勝を争う最大のライバルが力を出し切っても、対抗できる究極の連続技を五輪前最後の実戦で成功。世界を驚かせた。

 誇示したのは連続4回転の爆発力だけではない。3本とも90点台をマークしたのは出場した10人中、平野だけと安定感も証明した。金メダルへ、準備は完全に整った。

 ◆スノーボードの採点方法 平昌五輪では6人の審判が高さ、テクニック、難易度などの要素から100点満点で採点。最高得点と最低得点を除いた、4人の審判の平均得点で順位を決定する。予選は2回、決勝は3回を演技し、ベストスコアで争う。予選の上位12人が決勝に進む。