ソチ五輪銀メダリストの平野歩夢(19=木下グループ)が予選を3位通過した。1回目に87・50点をマークすると、2回目は95・25点に伸ばした。4回転技は封印し、ミスのない滑りで確実に突破。今日14日の決勝では、自身が史上初めて成功させた連続4回転「DC14-キャバレリアル(キャブ)DC14」の大技で、王者ショーン・ホワイト(米国)超えを目指す。

 五輪でも平野の平常心は保たれたままだ。突き抜けるような青空の下、余裕の表情で滑った。1、2本目とも4回転の大技は温存。それでも高さと技の完成度は抜群。2回目の最後には、縦2回転、横3回転半の「フロントサイドダブルコーク1260(DC12)」を入れ、決勝の“予行演習”を終えた。左手でボードを上げて、クールに大歓声に応えた。2度目の大舞台も「いつも通りの感じですね」と貫禄十分だった。98・50点のショーン・ホワイト(米国)、96・75点のスコッティ・ジェームズ(オーストラリア)にはわずかに及ばなかったが、好発進した。

 取材エリアにいる最中。金メダル2度のショーン・ホワイトが演技していた。出場29人中最高点と演技のスロー映像が流れるスクリーンを見つめた。自身を上回る点が出たが「そのぐらいは出ると思いました」と意に介さない。1月のXゲームでは、世界初となる連続4回転を決めて優勝した。右足前の正スタンスから入る縦2回転、横4回転を、逆スタンスの同じ技につなげる大技だ。「自分のことだけ気にして、大きい影響になればいい」と自信ありげに話した。

 気持ちと向上心は昔から強かった。小学低学年の頃。兄英樹とバンクーバー五輪同種目代表・工藤洸平(28)の父佳人さん(50)が指導するスノーボード合宿に参加した。スケートボードは得意だったが当時、スノーボードは特別うまいわけではなかった。技を教えてもらうと、絵や文字をノートに記し、兄の様子を見ながらイメージトレーニングをした。翌日、ボードを手でつかむグラブの練習。だが、なかなか正しくできない。その手は骨折していた。でも滑れなくなるのが嫌で黙っていた。すぐにばれてしまったが、翌日からギプスをつけて滑った。

 あれから約10年。世界のトップライダーとなった平野が目指すは誰も追いつけない滑り。今日で19歳77日。自分の滑りを信じ、冬季五輪では日本人史上3人目となる10代金メダルへ突き進む。【上田悠太】